アーリン。
それが私の名前であります。
黒猫さんが付けてくれた名前であります。

大きな教会で黒猫さんに起こされた私は
何も記憶がなかったのであります。

どうしてこの名前を付けてくれたのか
どうして私をこの世へ戻したのか
それを知ったのはこの屋敷へ来た時からの事であります。

それまでの記憶のなかった私でありますが
その事だけは覚えていたであります。

覚えてはいたのでありますがメイドとして入ったお屋敷。
そうそうお話をする事も出来ず
私は掃除をするふりをしてそのお部屋へ侵入したのであります。

そこには楽しそうに会話するニア様とリア様。
その時どれほどまでにリア様を呪った事か。

しかし、愛するが故に何も出来ず
私は耐えたのであります。

そして時が過ぎ、
私もニア様と普通に会話をするような時間を持てるように
なった時の事であります。

「ニア様の大切な物は何でありますか?」

「んー今はこの弓かな。
けど一度も使って無いんだ。」

「どうしてでありますか?」

「これは俺のものであってそうじゃないんだ。」

その時、どれほど名乗り出ようかと思ったであります。
私がリアだと。

じゃこうとの約束。
自分が誰なのか言うことは決してしてはいけない。
言ってしまえばすぐにあの場所へ引きずりこまれるのであります。

私はそれから自分でニア様の持つ弓と同じものを
何年もお金を貯めて買ったのであります。

矢まで買うことはとうてい出来なかった私は考えたのであります。
無限に出せる矢があれば弓だけで良いという事。

その日から私のやる事が一つ増えたのであります。
そしていつかお役に立てる日のために。

私はその日まで生き続ける。





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