とりあえず押してみても引いてみても
まったく動きそうに無い。

「開くの待つしかないのかな。」

「まずはそれしかないかもね。」

のん気にしているリア。
鬼が来ても平気だからなのかもしれない。

すると鬼の気配が近づいてくる。
門番がやられたのに気が付いたのかもしれない。
さっきよりも強そうなのが1匹降りてきた。

「ノエルは下がってて。」

さっきよりは少しだけ本気モードになったようで
身構えて相手の動きを見ている。

しかし、先に仕掛けたのはリアだった。
構えもしない鬼に向かって行く。

そして、その刃が鬼に突き刺さった。
かに見えたがリアの刀がその皮膚に消化されているのだった。

慌てて引っ込めたリアだが既に遅く
その刀は使い物にならなくなった。
しかし、リアは慌てる事なく
一度戻すと再び刀を作り出し、構えた。

「あれは龍鬼リガール。
あいつ相手に1人じゃまずい。」

そう言いながらネムはあっちへ行ったり
こっちへ行ったりと慌てている。

苦戦しているリアに私は無言で加勢した。
しかし、冷気の球ではまったく通じない。
避ける事もなくリアだけと戦っている。

「駄目…。」

私の攻撃なんか見てもいない。
どれだけぶつけたって…。

そうしているうちにもリアは追い込まれていく。

私に力が無いから…。
また苦しませてる。

その時、握りしめていた手の中から熱い物が溢れだしてきた。

何もできなくて悔しいとか
助けたい思いとか
いろんな思いが力となって溢れだしてきた。

けど…何をしたら…。

私は考えた。

私に出来る事。
何のために…何のために…。

いくら攻撃したってそれが効かない事は
もう分かっていた。

だから私に出来る事。
それをする。
それで良いんだ。
私が強くなる事なんてない。
私は…。

両手に込めた思いを私はリアに向けて放った。

リアに直撃したそれはリアを温かく包み込み
そして、消えて行った。

「あれ?」

リアが何か不思議なのか戸惑っている。
それまでまったく避けるだけで精一杯だったリアの動きが
俊敏になり軽く避けている。
しかも、攻撃が当たるたびにダメージを受けている。

徐々に形勢逆転していくと
リアはそのままリガールを倒してしまった。

その勢いのまま門に青い刃を飛ばすが
傷1つ付かない。

「やっぱり無理…。」

しかし、門が音を立てて開き始めた。
死者が入ってきたのだろうか。

「む…。」

倒れたはずのリガールが平気な顔をしている。

リアが再び倒しに入るがさっきのまでが嘘のように
動きが鈍っている。

門からはもくもくと煙が上がり続けている。

「邪魔だ。
死者が呼んでいる。
貴様も死者となり成仏せい。」

リガールの渾身の一撃がリアに炸裂する。



「ふぅ…大丈夫でありますか、お嬢様?」

目をそーっと開くとそこにはアーリンが立っている。

「貴様は何者…。
死者以外に門をくぐるなど…。」

「お嬢様、怪我。
治療するであります。」

「無視すんな、クソアマ。」

「少々お待ちを…。」

アーリンが振り向き指から何かを外すと
光に包まれていく。

その光はどこかで見た光に似ていた。


「終わったであります。」

光の中で何が起きたのか分からない。
きっとリアも分からない。

一度見た時のアーリンさんとは別人?

治療も終えてリアを抱えたまま出ようとするアーリンさん。

「待ってアーリンさん。」

リムとネムが寂しそうにしている。

「ここは死者の世界であります。
生きている者のいる場所ではないのであります。
ノエルさんも早く。」

「分かりました…。
リム、ネム…元気でね。」

「お別れ…ぴーちゃんをよろしく。」

「うん。」

私は二人と強く抱き合い、
そして、門をくぐって現世へ戻った。




傷は回復したけど意識のないリアを
家まで送るとアーリンさんはすぐに屋敷へ戻ろうとする。

「待って、アーリンさん。」

「なんでありますか?」

「貴女いったい何者…。」

アーリンはこっちを振り向き不思議な笑顔でこう言った。

「秘密であります。」



結局、謎なままアーリンさんは帰ってしまった。
だけど、秘密と言いながら天国と地獄の話をしていった。
それがどんな意味なのかは分からなかったけど…。

天国にも同じように扉があって現世とは完全に遮断されているらしい。
それは当たり前か…。
そして最後に…天国の扉を開けば道は開けると言って
帰って行ってしまった。

「天国の扉…。」

前に行ったところは天国じゃなかったって事!?

また一つ探し物が増えた。





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