たった一つ願いが叶うのなら…
小さな希望の光…
少女はそこに立つ
真っ直ぐに見る先には忌々しい
闇に堕ちた国
「ここにあるのか…」
風にえんじ色の髪がなびくと紅い右目が夕日に照らされる
しかしもう一方の目には包帯が巻かれている
綺麗な顔になぜかあっているようにも見える
服装は動きやすそうな感じにしている
そして腰には大きな剣
肩には不思議な生き物が乗っている
それは龍
紅くて小さな体にかわいい目
「ルイも本当に良いの?」
「俺はいつでもOKさ
最初から言ってるだろ
どこまででもレインに付いていくってな」
小さいわりにはしっかりしている龍の子ルイ
「私は自分が何者なのか知りたい
なぜこんなところにいるのか以前の記憶がなにもない
何かとても大切なものを失いかけた気がする…」
レインって名前は自分でつけた
気が付いた時最初に浮かんだ光景が滝だったから
それだけ
大量の雨が自分に降り注いでいる気がした
呼吸もできずもがくだけ
生きたい…生きたい…
逃げられないことは分かってたから
それでも助けてくれると願っていた
そこにいたはずの誰かに…
「なあ、それ何回も聞いたぞ
また妄想モードかよ」
レインは剣を抜きルイに向ける
「ふふふ…」
「おいおい、冗談はよせよ
あぶねーな」
「邪魔な奴は全部斬る
あんたは斬らないよ
大切な仲間だもんね」
「あはは…」
苦笑いするルイをよそに剣をしまうともう一度眼下に見える国を見た
「ここを降りてしまえばもう奴等の国…」
「そうだな、気をつけないとどこに何がいるかわからん」
あれから何年だろうか
光と共に消えたLEO
失った左目
得た物は変な相棒のルイ
「なんだよ、その目は
俺は食べれないぞ」
バチンと一発叩く
「いてーじゃねーか、レイン
なにすんだよ」
「なんとなく叩きやすい位置にいたから」
「なんだよ、それ」
こんな会話もありなんだってLEOに教えてもらった
楽しいってこういうことなんだ
あの日から目的も持てた
過去も知りたいけど取り戻したい物は目
あの時えぐりとられた左目があの国にある
まずはそれから…
夕暮れの太陽を背にして闇に包まれている国へ入ってゆく
生い茂った森の中は更に暗く不気味に見える
「なあ、昼間来た方がよかったんじゃないか?」
「この方がいくらか見つかるのに時間がかかりそうでしょ」
「むぅ、無事に抜けられたらそう思うことにするよ」
嫌味たっぷりに言いながらレインの肩から離れ生い茂る森の上に出ると辺りを見回す
「今のところは誰もいそうにないな
真っ暗な森がずっと続いてる」
しばらく何もなく済むと思い少し安心したレイン
その頃、国ではレインの目の話がされていた
「もう片方がこちらにわざわざ近付いてきているようだ
しっかり森に入りきったらしかけろ」
偉そうな男がそう言うと手下らしき数人が一斉に飛び出して行った
「レインは望み叶ったらどうするんだ?
やっぱ元の世界に帰るのか?」
「さあ?」
先のことなんて分からないし考えても嫌なイメージしか浮かばなかったから今したいこと
だけ考えることにした
「ここが非現実的世界であっちが現実だとしても生きてる時間は平等だし自分の意思で生
きてる
誰かが作り上げた世界なのはあっちも同じ
ここにいればこったが現実であっちは別の世界
偽りなものなんてない」
「急にどうした?」
「表と裏があるって言うけどこれに関してはないと思う
ルイはあっちのこと知らないだろうけど何も変わらない
時代が違うって感覚かも
ここよりは平和に見えて毎日危険があるこことは違うけど平等にあるよ、時間だけは」
「けどここなら命が尽きない方法もあるじゃないか」
「尽きない?
それは違うでしょ
器を変えたり元から命のないものは別
年はとるし病気にもなる
それが普通」
「不死が良いわけじゃないか
あっちにいけたら何か変わるのかもな」
森の深くまで入ると獣も寝静まっていて風の音くらいしか聞こえてこない
「いやに静かだな」
「何もないならないで良いけどここまで来ていてまだ見つからないのも不自然」
「まさか急に襲ってきやしないよな」
「来てもこれだけ静かならかなり遠くからでも分かる
相手も同じだがな」
不敵な笑顔を作るレイン
実はうずうずしていることにルイは気が付いている
片目になっていたってその強さは半端ない
もう片方の目を奪いにこないのがその証拠
白い包帯が痛々しくあるはずなのに妙にしっくり合う
「そういや相手は何人くらいなんだ」
「そんな多くはない
雑魚が大勢いても無駄だからな」
「なるほど、側近の奴等以外は問題ないってことか」
そうだとすればせいぜい5人もいれば多いくらいかもしれない
遠くから矢でも飛んでこようものなら木にあたる確率が高いしレインが気が付かないこと
もない
大勢でこられてもルイの火炎がある
「誰かきたみたいだ
ルイは見えないように少し距離をとって待ってくれ
目は良いんだから私よりは良く見えてるんだろ」
「そりゃそうだ
しっかりやってくれよ
俺は他にいないか注意しながら付いていくよ」
手で了解のサインを出すとレインは慎重に進んでいく
数歩進んだだけで殺気が伝わって来た
明らかに味方や獣ではなくレインを狙っている奴等だと分かる
しかしそこでレインは歩くのを止めた
なぜわざわざばればれな状態で現れるのかがわからなった
せっかく見えない位置にいるのが台無しだ
あれは囮でもう何人か隠れているのだろうか
ルイからのサインらしきものもない
よそ見していた瞬間に間合いを詰めてきた何者かがレインの視界に見えた
その大きな体はまるで熊かゴリラに見えるくらいで獣そのもの
しかし服も着ているし大きな斧まで構えている
「そこのちっこいの、お前が紅の騎士か」
妙な名前がついているらしい
「貴方こそ私の目を持ち去った国の人かしら?」
「もう一方の目ももらうぞ」
納得のいく答えを聞いたかのようにレインに向かって斧が振り下ろされたが難無く交わす
ともう一度聞く
「そう受け取って構わないのだな?」
しかし反応がないままもう一振り斧が襲いかかる
無駄だと言わんばかりにすれすれのところで避けるとしかたないと言った感じで剣を抜く
剣を抜いたもののなかなか攻めない
「どうした
避けてるだけじゃ俺には勝てないぞ」
聞いていないふりをしながら軽やかにかわし続ける
その間ずっと木が次々と倒され森が破壊されてゆく
「なんのつもりか知らんが無駄だ
逃げ切れるはずがないぞ」
ハァーっと溜め息をつくとレインの足が止まった
「どうやらお前しかいないらしいな」
「なにっ?」
「木が邪魔で他の奴がいるかわからんかったがいないことが分かったよ」
そういうと即座に剣を構え今度はレインの方から仕掛けた
一撃目は右腕を
二撃目は左腕を
「ぐわーっ」
圧倒され何もわからないといった様子で
奇声を発している
「醜い外道よ、紅蓮の炎により浄化されたまえ」
レインが詠唱すると剣が紅く炎をまとい燃え始めた
そして魔物に向かって剣を振り下ろした
「ぐぇぇぇ」
さっきよりも酷い奇声を発しながら
紅蓮の炎に包まれ魔物はあっと言う間に消滅した
無事を確認するとルイが現れる
「派手にやらかしたな
ばれたぞ、確実に」
「派手な方が良いの
どうせばれてるし」
「今のは雑魚だったみたいだけど油断するなよ
奴等の目的は命じゃなくて目なんだからな」
「わかってる」
さっきの魔物がだいぶ森を開拓してくれたお陰で歩きやすい
真っ暗だった空もいつの間にか月が見えている
「なあ、お前の目ってなんなんだ?」
レインは凍り付いたように立ち止まった
「な、なんだよ急に」
「詳しくは覚えてない
と言うかさっぱり?
たぶんこっちに来た時見えなくなってた目の代わりに入れたんだろう」
「じゃあなんで目を狙われるんだ?」
「これは元々1つだった物を2つにしたものなんじゃない?
だからそれを知った誰かが狙ってる
どっちにしても取り返さないと不便だから手間が省けるよ」
苦笑して言うと剣を手にした
「やっと2匹目
下がってなルイ」
「やれやれ…」
さっきと違い殺気がない
どうどうと見つけて欲しいとでも言うように歩いてきた
それに熊やゴリラには見えず人に近い形をしている
「紅の騎士?できれば遭遇したくなかったのにな」
何かすかした奴に見える
苦手だ
レインは構えるとすかさず斬りかかった
「おいおい危ないな
いきなりなんて騎士がするもんじゃないぞ」
「貴様等が勝手に付けたのだろう
戦う気がないならそこをどけ」
すかした奴はジーッとレインを見る
レインは得体の知れない感情にイライラして再び斬りかかるがなんなくかわされる
「僕はこの国より君に興味がある」
はあ?
って言わないまでも呆気にとられ変な顔になっている自分に気が付いたレインの手が止ま
る
「安心しろ
攻撃はしない」
すかした男が剣を地に突き刺すと手をあげる
「ここなら別に誰にも見つからない
見つかったってどうせ下等な魔物だけだ
王はその目が欲しいらしいが俺には関係ない
むしろ貴方に興味がある
」
「謎だな
今会っただけで何がわかる?名前も知らん」
「名前はブラック
会ったばっかりだから興味があるんじゃないか
人らしい人を見たのも久々だからってのもあるかもな」
レインも剣を鞘にしまった
「まだ信じたわけじゃない
それ以上近付けば斬る」
警戒しつつも企んでいるようにも見えなかった
「ここから先には城があるが入口はそっちにはない」
「えっ」
「入口を教えてやるから1つ聞いてくれ
俺1人じゃ無理なんだ」
話によると妹が囚われているから仕方なく傭兵になったとか
しかし妹を返す気なんてさらさらないことくらい知っている
だからもう1人手を貸してくれる仲間を探していたらしい
「俺は勝手に行動するさ
貴女もそうしたら良い
どさくさに紛れて妹を助けさせてもらう
さっきの技の派手さからしたら城はすぐパニックだ」
少し調子の良い奴と思いながらも入口まで安全に移動できるのなら問題ない
後は勝手にさせてもらえば良い
ルイにも合図を送り気が付かれない距離から追わせた
「この城に強い奴は何人いる?」
「強い奴か
たぶん2人じゃないか
いつも王の近くにいる奴等さ」
つまり目を取り返すにはその2人を倒してからってことになりそうだった
しばらく歩くと城の見えた辺りで何やら石の壁を叩いている
「何をしている?」
「見てなって」
ブラックが何ヵ所か叩くと壁が動きだし入口となった
「まさかこんな仕掛けがあるなんて」
いきなり開いた壁に唖然としているとさっさと入るように言う
ルイが入る前に閉まってしまったが飛べるからなんとかなるだろうと思ってほっておいた
「なんでこんなところに入口を?」
「あの王のことだから警戒してのことだろう
さてと、後はまっすぐ行けば城の中に出る
大半の奴は森に行ったが多少は残ってるはずだ
後は任せるよ
騒ぎ出したら俺は俺で行動する」
それだけ伝えるとさっさといきなと手を振る
何か騙されてるような気分にもなるが城に入れるなら戻るわけにはいかない
ルイも向かってるはずと思い真っ直ぐ城に向かって歩いた
数分で城の中に入れたが本当に誰もいないのだろうか
門番すらいない
「ルイもまだか…」
静か過ぎてどこから狙われても良い常態だ
剣を抜くと静かに歩き出す
コツン…コツン…
広間の中央部までくると隠れていた兵士たちがいっせいに矢を放ってきた
矢はレイン目掛けて一直線に飛んでくる
しかし既に剣を抜いていたレインは慌てることもなく
円をえがくように一振りすると
全ての矢がその場で方向を変え
真下に落ちた
「打て打て、休むな」
レインは落ちた矢を1本拾うと声のする方へ投げた
見事に命中?
辺りはざわめきだし
そして静かになった
「…誰?」
静かになった分微かな動きも分かるようになった
誰かが確かにいる
微かな気配を感じながら警戒しつつも半歩進む
立ち止まっている余裕がないほど狙いが定められ今にでも向かってくる気がした
しかし辺りを見回しても姿が見えない
レインが近付いた分以上に相手との距離が縮まったのは肌で感じられた
向こうも近付いてきたということは…
レインに1つの仮定が生まれた
相手にも自分の場所はまだ知られていない
だとしたら…
レインは歩くのを止め相手の微かな気配をうかがった
すると確かに誰かがいた
ジリジリと歩きながらこちらのいる場所を探しているようだ
決して真っ暗ではない場所
多くの柱がありその1つに隠れているレイン
相手も同じように隠れながら近付いてくる
手には赤い槍
青系の服
長身で痩せている男だ
ブラックの言っていた強い奴だろうか
しかし槍は厄介だった
腕の長さも含めるとレインの間合いの方が遥かに狭い
中に入らなければ直接斬ることは到底不可能だろう
とは言っても距離を保つにはかなり離れる必要があった
それでは何もできない
一番楽なのは先に仕掛けること
見つからずに背後へ回って一撃で仕留める
仕留められないまでもダメージくらいはと考えた
静かに長身の男が通り過ぎるのを待つことにした
焦る必要はない
レインは心を落ち着かせようとしていた
今までにないくらいの緊張感がこの部屋全体を包んでいる
勝負は一瞬
今までの相手とは格が違う
最初の一撃で何もできなければ太刀打ちできそうにない
考えると悪い方へしか考えられなくなる
長身の男はやがてレインのいる場所へ来た
距離はほんのわずか
気が付かれないように背後へ周ると一気に間合いを詰め脳天目掛けて剣を振り下ろした
感触がない
外れた
長身の男はひらりとかわし槍を突き刺してくる
レインは避けようとしたが槍はレインの服をかすめていった
「やれやれ、どこから来るかと思えば」
最初から分かっていてあんなことをしていたのか
レインは頭に来た
『こいつ、私に勝てると思って遊んでいる』
確かにこの距離じゃ圧倒的に不利だった
素早く立ち上がると間合いをつめようとレインが大きく一歩前へ出ると半歩下がり槍が飛
んでくる
避けようとすると更に半歩下がられる
『きりがない』
二度三度繰り返すと全く無駄だとわかる
半端につめようとすると軽く避けられた
そしてレインは一気につめる覚悟をした
失敗すれば直撃
成功すれば倒せる
意を決して一気につめた
攻撃がやんだ瞬間
レインが一気につめると油断していた長身の男が一瞬怯んだ
その隙をついて渾身の一撃放った
しかし再び空を斬る
すかさず槍が飛んで来るが怯んでいた分半歩足りずレインはすれすれのところで避けきっ
た
「ふぅー今のはやばかったぞ
だがそろそろお終いにしようか
楽しい時間なんてものはすぐに終わるのが常」
楽しくはないが早く終わらせたいのは当然だった
体力ならあっちの方が上
だが素早さなら自信はあった
読みの早さの分でカバーされていたが連打なら
レインがゆっくりとした体勢から一撃入れるとほぼ同時にニ撃目の体勢に入った
槍では連打に対抗できるはずもなく避けるが限界がきた
『とらえたっ』
真正面で体勢を崩した長身の男
すかさず剣を振り下ろした
「ぐはっ」
何が起きた
声にならない
刺された?
倒れたのはレイン
確かに槍の間合いではなかった
なのにレインの剣が長身の男に届く前にレインを何かが突き刺した
「奥の手ってのはいくつも用意していて当然だ」
左手に持っている小刀が見えた
懐にしまっていたのだろうか
全く警戒していなかった
「もう勝負は決まったかな
それでは歩けてもさっきのようなことはできまい」
その通りだ
脇腹を押さえながらまだ諦めないレイン
「とどめを刺したらどうだ」
まだ警戒している長身の男
一歩一歩ゆっくり近付いてくる
まだだ
まだ…
ぎりぎりまで近付いてくるのを待つ
それが最後の手段
「すぐに楽になるさ
痛みなどない」
あと少し…
槍の間合いになる寸前レインは唱え始めた
「紅き天空より舞い降りたまえ」
その刹那だった
天井より遥か上空から舞い降りたかのような速さで紅い矢が長身の男に降り注ぐ
光速の紅い矢は確実に長身の男に突き刺さる
しかし致命傷には至らない
「まさかこれほど高等な術まで使えるとはな
しかし今のでお終いか」
長身の男が槍を構えレインに向けて突き刺した
グサッ
「ぐふっ」
今度は長身の男が苦しんでいる
「まさか…さっきの術は布石だったのか
紅く燃える剣とは」
「派手なものを使えば地味なものが隠しやすくなる
お前の敗因は自信過剰なところだったかもな」
「自分の間合いを広げるとは見事…」
レインは近寄ったわけじゃなかった
術を唱えた後に以前使った技を使い剣に炎を宿しそれを長身の男に向けて放ったのだ
もう意識のない男を見るレイン
「そういや…名前すら知らなかったな」
まだ痛む脇腹を押さえながら立ち上がると太い柱に体を預け天井を見る
「深いな…」
手当てすることもできず応急処置のみ済ませると出口へ向かって歩く
本当に静かだった
レインの足音と息遣い
それに風の音しか聞こえない
抜けた先は螺旋状に続く階段だった
細い空間にかなり上まで続いている
一度振りかえるが道はここにしか見当たらない
「ルイはどこ行ったのよ…」
あいつがいれば様子見てきてもらえるのにと思いつつ上り始めた
ふとあの時を思いだす
あの場所も螺旋になっていた
高い高い塔
頂上には不思議な空間があって消えてしまったLEO
少しだけ希望を持って進む
紅い灯が点々と見えそれを頼りに上ってゆく
ところどころにある窓からは紅い月が見える
「静かすぎる」
なぜあれだけの音がしていて他に誰も出てこないんだ
さっきいたので全員だったのだろうか
レインは上りながら考えていた
既に目はここにないのでは、と
ひたすら上っていると途中に扉があった
まだまだ上に続いているように見えるが戻ってくるよりは、と思い扉を開いた
中はすぐに行き止まりだったが誰かいる
「誰?」
鎖に繋がれている少女がこちらを見ている
金髪にまだ白い囚人服
何者だろうか
レインは名前を名乗るとそこ子も話し始めた
「私はマリン
町にいたら急に襲われてそれ以来ずっとこんな場所に閉じ込められてるの」
まさかブラックの妹?
似ていない
とても同じ遺伝子からできたとは思えない
しかしなんの為に?
奴隷には見えない
「あなた家族は?」
「お兄ちゃんがいるよ
きっといつか助けに来てくれるから待ってたの」
「兄貴か
そいつの名前は?」
思った通りだった
しかし城の中に特別1人だけで閉じ込められていたのだろうか
とにかく連れてはいけない
「私はまだすることがある
ここで大人しくしていたらブラックが助けにくるはずだから」
レインは鎖を切ると再び螺旋階段を上り始めた
次第に頂上が見えてきた
しかし、もう少しと言うところで再び扉が現れた
さっきと違い多少頑丈にできている
しかも殺気が溢れてくる
さっきの長身の男とは違う強い殺気
開くべきなのか迷う
上へはもう少しだが気になる
ためらうもゆっくり扉を開くと中には女がいた
すらっとした体型で黒い服…
目が紅い
そして髪まで紅い女…
つまりそっくりだった
髪の色がやや違う感じはしたが似ている
一瞬鏡があるだけの部屋かと思うほどだった
唖然としていると有無を問わずに向かって来た
剣に炎をまとい振り払って来た
その瞬間
レインの周囲は炎に包まれる
「同じ技!?」
レインは炎を振り払うと一息付いた
「いったい何者
なぜ同じ技を?」
「黄泉より蘇りし作られた者
同じ匂いがする」
わからない
わかりたくない?
話せば何かわかる気がしたのにいざこの場になると知りたくない気がした
何か思い出すこと
それが正しいのかわからない
「我々はマスターによって作られた
この目こそ命
我が王は貴様のもう片方の目を得たいと考えている
私怨はないが覚悟して頂く」
逃げるわけにはいかないが勝てるとも思わなかった
それに戦う理由が分からない
初めて自分と同じ境遇の人を見つけたのになんのために
躊躇している間にも相手は向かってこようとしている
「待って、貴女名前は?
何も知らないで戦うのは嫌…私はレインよ」
果たして止まってくれるのか
なんて思ったがすんなり立ち止まる
「私の名はアクト」
「アクト…貴女が戦う理由は何?
なんのために?」
一歩ずつ近付き様子を見ながら語る
「私は気がついた時からここにいた
だからここでできることをしてきた
何が正しくて何が間違っているかは時代が決める
真実も虚偽も関係ない
ここでは強い者が生きる
それだけが真実」
話し終わると一気に間合いに入って来る
鋭くレインに突き刺しにかかる
紙一重のところでかわすが脇腹の傷に響く
それに気が付かないわけもなく負担がかかるように攻め入ってくるアクト
「容赦なしだね…」
「………」
真剣なのか聞こえなかったのか返事はなかった
しかし攻撃が単調だった
脇腹は厳しいがそれほど困難でもなかった
遊んでいるのか?
などと思えるくらいさっきのとはまるで違った
動きの1つ1つに迷いを感じさせる
動きが単調で読みやすい
何を迷っているのか分からないがチャンスだった
傷付けたくはないがそんな甘いことを言っていると勝てそうにないことも事実
受け身になっていたレインはアクトの攻撃パターンを見切って上手く反撃に出た
漆黒の闇に染まる2人が月に照らされ不気味に紅く光る
カウンターになったレインの反撃はアクトの左腕もかすめた
大きく後退したアクトに対して更に間合いを詰めにかかるレイン
しかし片目では距離感を正確には判断できない
一定の距離を保ったままのアクト
レインの先を読み上手くかわしてゆく
「ねぇ、アクト
貴女とても目が良いのね」
「…」
だんまり
それだけ必死なわけだ
それにまだ何か戸惑っているのだろうか
動きが鈍い感じがした
しかし、それでもかする程度と正面にアクトをとらえることはできない
上手くかわされ続けるレインは剣に術をかけ始めた
やばいと分かってかアクトも間合いをつめてきた
「かかったな」
レインは術をかけたまま剣をアクトに向け振りはなった
しかし空を斬り逆にアクトの攻撃をくらってしまった
レインは入ってきた扉ごと螺旋階段の壁まで吹き飛ばされた
「ぐっ」
「もうやめましょう
潔くあの世に戻りなさい」
静まり返る螺旋階段
その途中にいる2人
「こんな悲しい相手は二度とごめんだわ
さようなら」
アクトが剣をレインに向けて振り下ろした
しかしそれが刺さる寸前レインの剣が炎を放った
さっき唱えていた術だ
炎は一直線に突き刺さる矢となりアクトに直撃した
強い力によってアクトの体を宙に浮き
さっきの部屋の奥にまで簡単に吹き飛ぶ
しかもそれけでは済まずに部屋の壁まで破壊してゆく
部屋の奥の壁んを突き破り空へと放り投げられた
「………バ カ」
とにかく先を急がなければと思ったレイン
もう頂上までは誰もいない
あっと言う間に頂上だが誰もいない
王は?
気配がない
人や生き物がいるようには思えなかった
それに目もない
「逃げ出した後か」
と、戻ろうとした時外から鍵がかかる音がした
「ざまーみろ
どれだけ強くても頭が悪いな」
おそらく王の声だ
「後でじっくり目を頂くぞ
くっくっくっ」
王が部屋から離れてゆく
「待てっ」
聞いてない
しかし誰もいないならと剣に炎を宿し壁に向かって振り切る
が、全く傷が付かない
何度も繰り返すが結果は同じだった
「くそっ」
なんとしても出なければ
ここにいたらやばい予感がした
そこへ不意に窓を叩く音がした
「ルイ!?」
そこにはルイがいる
しかし声は届いていない
開けようとしているのはわかるがとても開きそうにない
しかし他の場所よりはもろそうだ
「ルイ頑張って」
しかしびくともしない
見兼ねてレインも内側から炎で窓を破ろうとしたがなかなか上手くいかなかった
すると突然床から黒い煙が上がってきた
「まずい
焼き払う気?」
紅の目が熱に強いことを知って余分なものは消すってことだろう
「ルイなんとかしなさいよー」
聞こえてはいないがルイも必死だ
と、ルイがレインの視界から消えた
「ちょっとー見捨てる気?」
違う
ルイは勢いをつけて体当たりしてきた
パリンという音と共にルイと粉々になったガラスの破片が一緒に落ちて来たが迷うことな
く受け止めた
「ルイ?
平気?」
「ちょっと無茶だったかな
こんな痛いのレインに叩かれた時の次くらいだ」
「何いってんのよ」
「早く窓から出るんだレイン
もうじきここはやばい
あの王様は地下に行ったぞ
早く行け」
するとルイはレインを突き飛ばした
「ルイ?」
「来るな、もう分かるんだ
なんか眠たいよ…」
レインが近寄ろうとした時ルイは床にパタリと落ちてピクリともしなくなった
そして大爆発
寸前のところで逃げ出したレインはルイのためにも地下へ急いだ
途中マリンがいた部屋を覗くが誰もいる気配はな
既にブラックが助けたのだろうか
さっきのホール…
あの男が無言で眠っている
もうすぐ地下だ
少し慎重に速く歩くレイン
「誰もいない…」
地下に戻ったレインはブラックの行った方へ向かってみることにした
そこは何かが腐ったような臭いがするし
化け物でも出そうな雰囲気だった
恐る恐るほんのり付いている灯りを頼りに足を進ませる
かなり長くまで続いているようで誰の声もしない
道もく細くねくねしていてまるで来るなとでも言っているようだった
何個目かの曲がりを超えた辺りで何か聞こえて来た
しかし人が話すような声ではなく不気味な鳴き声のようなもの
周りには誰もいない
ソーッと壁の向こう側を見ると鉄の棒が見えた
檻?
まさに檻だった
いくつもの檻が壁に掘られていて中には何かが確かにいる
しかし人ではない生き物たち
森で見たような奴等が檻にいれられている
「まさか…」
レインの中で嫌な考えがよぎった
人と獣の配合
そんなこと聞いたこともないし見たこともなかったが獣が話したり人の言うことを聞いて
いるのはおかしい
優れた知能を持っている証拠かもしれない
ここにいるのは失敗作と言うことなのかもしれない
何か言いたそうには見えるし話そうとはしているがとても聞き取れるものではなかった
それに理性があるようには見えない
知能だって高そうではなく檻から出ようと必死に体当たりをしたり鉄の棒と棒の間から手
を伸ばしている
「今はまだ何もしてあげられないよ…ごめんね」
慰めにもなりそうにない言葉を残してレインは走ってその場を駆け抜けた
声が聞こえなくなってきた辺りで足を止め呼吸を整える
うつむいたまま呼吸を整えるがなかなか肩の揺れは止まらない
それどころか膝からガクッと崩れ落ちた
「なんでよ…
こんなのないよ
なんであんなひどいこと
私…人を…こ…」
口の中に急にすっぱいものが込み上げて来た
「ハァ…ハァ…」
少し落ち着いてきたが全く力が入らない
「なんの為にここまできたんだろう
いろんなもの失ってまで取り戻すものってそんなに大切なものなのかな…
ルイ…教えてよ」
虚しく抜けてゆく声
返事は返ってこない
代わりに水の流れる音が聞こえてきた
さっきまで色々な音に消されていたが確かに聞こえる
「なんか嫌な予感…」
それでもなんとか立ち上がれるようになったレインは壁にもたれながら音のする方へ向
かって一歩一歩進んでいった
次第に音は大きくなり細い道を抜けた先には広い空洞があった
下の方に川が流れていて向こう側には泉がある
その近くに誰かがいる
かなり派手な服装
考えなくてもわかる
王だろう
何をしようとしているのかは不明だがさっきのを見たから真っ当なことをしているとは思
えない
王の周りには数人の兵士がいるだけで全くの不用心といったところ
レインはまだ気がつかれていないと思いゆっくりと泉の方へ近付いてゆく
ある程度近付くと泉に向かって何か投げ入れている
そして何か話しているようだった
話しが終わると王はくるりと周り後ろにいる兵士の1人を泉の中へ無理矢理入れた
どぼーん
という音と共に中にいた何かが動き出す
魚?
巨大な魚がいる
そいつはもがく兵士を食おうと近付いて来る
水の中で魚より早く動くなんて無理なこと
しかし王が何かをした途端
泉の中が金色に光だす眩しすぎて直視できないレイン
光が収まるまで待つと中にいたはずの巨大な魚も兵士もいなかった
確かに消えたがそこには別の何かがいる
人の形はしているが魚にも見える
「やっぱり魔物を作ってたんだ」
見てしまった以上襲って来たらどうするか迷う
無理矢理あんな姿にされたんだ
しかも理性があるか分からない…
見る限り暴れている
理性はないようだ
王が手を上げると残りの兵士が一気に剣を投げ付ける
魔物と化した者は凄まじい声をあげ泉の中に逃げ込んだ
王はそれ以上はほっておけと合図し再び儀式のようなことを始めた
「いったいどれだけの犠牲を…」
辞めさせないとと思い王の前に飛び出した
「む?
貴様なぜここに」
「それ以上犠牲を増やさせない」
「片目なのによくここまでこれたもんだ
だが1人で来たのは間違いだぞ」
王が再び手をあげると兵士たちが構える
数はそう多くはない
だが場所が悪い
後ろは泉
避ける場所はない
覚悟を決めて剣を抜き構える
王の合図で一斉に向かって来る兵士たち
1対1なら楽々でもこういうのは慣れていない
術を使えばここ全体が危ない
しかしそこに1人の男が現れた
ブラックだ
「遅くなったな
妹は返してもらったぜ
もうあんたに仕える意味もない」
「ブラック貴様…」
ブラックが加勢してくれたおかげで難なく兵士たちを気絶させると残りは1人
「さあ、私の目を返しなさい」
王の首に剣を当て言うレイン
「分かったから離してくれ」
そのまま離すわけはない
「先にどこにあるのか言いなさい
そうしたら離すわ」
王は観念したのか力を失いガクッと崩れると懐から小さな箱を取り出した
「これだ…」
レインが王を離し箱を開けると確かに目があった
「これで用は済んだわ
じゃあね」
「生かしておくのか?何するかわからんぞ」
ブラックが言うがレインにはこいつが何かできるとは思えなかった
「良いのよ
どうせ何もできないし」
「甘いな、こういう奴ほどしつこいんだ
今のうちに…」
ゴゴゴゴゴ
ブラックがとどめを刺そうとした時地面が揺れた
「まさかさっきので崩れかけてる?」
「やばいぞ
早く城から出よう」
王を残して去る2人
牢屋をぶち破りながら走るレイン
中からは理性のない魔物
走るのは遅いが危機感くらいはあるらしく
なんとかついてくる
城があっけなく崩れてゆく
無残としか言えない
自業自得だろうが何か心に引っ掛かるものがあった
「俺は妹と村に戻る
助かったぜ」
別に何かしたわけでもないのになぜか嬉しい
こんな簡単に何かできることもあるんだと感じた
それでも犠牲も多い
ルイがいなくなった
敵だったけど確かに人だったみんな
やるせない
2人と別れるとルイを探してはみるがとても探せる状態でもない
朝日が昇り明るくなっても見つからなかった
諦めかけたその時物音がした
「ルイ?」
そう思ったが瓦礫が崩れただけだった
「そうだ」
忘れていたが既に手の中にあるもう一方の目
レインはゆっくり目を自分に付けた
両目が開かれた時
瞬間的に場所が変わった
見覚えのない風景だが懐かしい気がする
昔の風景といった感じで空が青く高い
のんびりと雲が泳ぎ風が心地よい
下には川があり誰かが遊んでいた
知らない子たち…
なのに嫌な予感
「そっちへいっちゃいけない」
何も知らないはずなのに知っている気がした
小さな男の子があのままだと流される
レインは走り出した
しかし間に合わない
走り出すと同時に男の子は溺れ流される
『助けなきゃ』
心の中で誰かが叫んでいる
そこには小さな女の子
細い体なのに強い意志
「お前も過去を変えたいのか?」
走っているというのに耳にしっかり声が届いて来た
「助けたいと言うのなら一度だけ力を貸そう」
「誰でも良いから早く」
レインがそう叫ぶと両目が熱くなった
すると周りの時間が止まったかのようにゆっくりと進みだした
「さあゆくが良い」
唖然としていたレインを謎の声が走らせた
すぐに川までは行けたがまた声がする
「お前はあいつらに手を貸すことはできない
ただあの女の子に一度だけ力を貸せる
その代わりお前は力尽きるかもしれん」
あやふやなことを言う…
いくらのんびり時間が流れても自分では救えないと言う
それなら…
「わかった
そうする
だから早くしてくれ」
力尽きても良い
全てなくしても良い
きっとそう思えるから
いつかそれが正しかったと誰かが言う
今、周りが否定したとしても
未来のために
レインの体が光だし
シャボン玉のように光の玉が
レインの体から宙に流れてゆく
次第に体が透けてきて意識が飛んでゆく…
『ここは…』
女の子の中にいたレイン
なんだか懐かしい
だが今はそんのことを言っている時間は無い
ゆっくり流れていた時が元に戻り男の子は
どんどん流されてゆく
自分よりもずっと軽い女の子の体でも
水の中を進むのはしんどい
レインは水の中を進むのを諦め
川から出て先回りすることを思いつき急いだ
『もっと急いで…もっと…』
この体の女の子がレインに話しかける
「貴女…意識があるの?」
『うん、不思議な声がしたの
彼を助けたいならって…
私、お姉さんだからちゃんとしないと…』
「そう…」
『この先にすぐ滝があるの
だからそこに行く前に早く助けないと』
「わかった」
レインは全速力で走り
男の子よりだいぶ先に行ったところで
再び水の中へ入った
少し流されるものの力はそのまま
全力で川の真ん中まで行くと
男の子が来るのを待って受け止めた
暴れる少年
なんとかそのまま岸まで行こうとするが
なかなか思うようには行かない
『大丈夫?』
「ちょっと厳しいかな…」
『私が言うとおりに大声で言って』
何か案でもあるのかとレインは女の子の声を聴いて
そのまま叫んだ
「こんなことになるなんてね
このままだともうすぐ滝だね
みんな死んじゃうのかな」
「大丈夫だよ
お姉さんなんだから絶対助けるから
何かあったら怒られるの私だし」
あれだけ暴れていた少年は冷静さを取り戻し
少し楽になったが今度は力が入らない
『どうしたの?』
「駄目だ…もう力が残ってない
このままじゃ…」
『………それなら彼だけでも突き飛ばして
お姉さんは私から出たら良いでしょう?』
「そんなことしたら貴女が助からない」
『きっと助けてくれるよ
この子はいざとなったらちゃんとできる子なんだから
だから今はそうして欲しいの』
その時、男の子がレインのことを突き飛ばそうとしてきた
必死でくらいつくが限界が近かった
『もう良いの、お願い
それと最後に一言伝えて…』
「やだ…私はお姉さんだから…岸に上がったら今度は私を助けてね」
レインは最後の言葉を男の子にかけると全ての力を使って
男の子を岸の方へと突き飛ばした
その時見た男の子の目…
レインは時間が止まったかのように思えた
彼と同じ目をしていることに気が付いた
「まさか、そんな…」
後は流されるだけ
もう何の力も無い
『ありがとう、お姉さん』
「うん…ねえ
貴女の名前は?」
『私はめぐよ
お姉さんは?』
「私はレインよ」
『変わったお名前…
だけど綺麗だね
生まれ変われたらそんな名前が良いな』
今、全て思い出したレイン
途端涙が止まらない
ずっと繋がっていたんだ
どれだけ遠くにいても
どれだけの年が経っても
「きっと平気よ
いろんなことがあるけど
最後にはきっと笑えるから」
『うん、そうだと良いな
お姉さんのこと忘れないよ
そろそろ滝だね…』
レインはなんとかしようとしたが
さっぱり体が動かない
「ごめんね…」
『お姉さん?』
「ごめんね…」
『お姉さん、どうして謝るの?』
「私が転んだからだ」
『え?』
わけがわからないだろう、めぐ
今はそれでいいのかもしれない
自分を助けられないレイン
だけど…そんな私をLEOが助けに来る
それを知るのがこんな時だなんて
これで一生が終わるんだろうか
体から次第に意識が飛び始めるのがわかる
「時間みたい…」
『お姉さん、泣かないで?
いつも一緒だから…
運命は変えられないけど
いつでも笑っていたら
きっと…
きっと幸せだから』
それを最後に声が聞こえなくなった
「お母さん…」
随分昔のことだった気がする
厳しかったお母さん
だけどあの時だけは泣いていた
理由も何も知らない
だけどその時誰かに言っていた言葉
今思うと一番辛かったのはお母さんなのかもしれない
厳しかったけど
私が死んでどれだけショックを受けたかわからない
「ごめんなさい、お母さん…」
レインの意識は次第に薄れてゆく
「もう一度…見たかったな…LEO」
ふわふわと
風船のように
どこまでもどこまでも
気のみ気のまま
風に吹かれて飛んでゆく
目の前にLEOの幻が見える
少年なんかじゃない
もう大人になっているLEO
何年も経ってしまったかのように
辺りを見ると白い空間…病院?
暖かい手のぬくもりが伝わってくる
懐かしくて優しい
声が聴きたい
貴方の声が
「おはよう」