ベニちゃんが…。

悲しい。
悔しい。

なのに涙が出ない。
本当に死んだのか分からないからかも…。

だけどパームの姿もない。
2人とも消し飛んだ?
爆発もなくただ消えた2人。

ううん。
死んでない…。

そんな簡単に死ぬわけない。

だから泣いてなんかいられない。


私はそのままもう1つの攻防をしている方向へ急いだ。
何人もの天使がアルシェリル1人を相手にしている。

私に出来る事なんてあるのかな…。
行っても何もできない気もする…。

それでも勝手に足が動くかのように全速力で走り抜ける。

その現場では恐ろしい数の稲妻が天使を襲っている。
どの天使も防ぐばかりで攻撃なんてしていない。

どうすれば良いの…。
こんな場所で何が出来るの…。

そうだ…。

ノエルは思い出した。
あの時もそうだった。
戦わなくても良い方法。

ノエルは手に力を込め始めた。
するとすぐに熱いものが溢れて来る。
それを戦っている天使たちに向けて放った。

それは辺りにいた天使たちに力を与え
何倍もの力を発揮する。

次第に圧倒されてくるアルシェリルだが
意外に冷静な顔をしているのが見えた。

まだ何は隠しているの!?

しかし、それ以上アルシェリルが先手を取る事はなく
勝敗は決した。

抵抗を止めたアルシェリルが天使たちによって確保され
静かな天界へと戻った。

「よくやりましたね、ノエル。」

微笑んでいるアンジュに私は素直になんてなれない。
ベニちゃんが死んだかもしれないっていうのに
どうして冷静?
ベニちゃんだけじゃない。
沢山天使が死んだし傷ついたのに…。

「どうしました?」

「いえ…。」

「…私たちは常に戦いの中に身を投じています。」

!?

「その中ではいつでも死と向き合い
その覚悟をしています。
それは貴女も同じでしょう?
命はいつかは尽きるもの。
それが少し早いかどうかだけです。
悔やむ事も必要ですがそれは皆に対して失礼。
失った者の分も生きなければいりませんよ。」

なんの答えにもならない。
そんなの。
悲しいけど乗り越えろって事?
そんなのすぐになんて出来ない…。
私よりも年下だったのに私が生き延びて
ベニちゃんが死ぬなんて…。

「とにかく今日一晩休んでゆっくりして下さい。
もう、下界も安全だと思うので明日には戻ってもらいます。」

…。
素っ気無い。
まあ、ここじゃ私は部外者って事だし…。
それも仕方ない。
もう、目的も遂げたんだし…。
これからアルシェリルがどうなろうと関係ないんだし…。


次の日の朝早くに下界へ戻された私を迎えに来ていたのは
アーリンさんだった。

「お帰りなさいでありあます、ノエルさん。」

「ただいま?」

ってアーリンさんがここに12時にって言ったんだっけ…。
しかも、偶然!?
…な、わけないよね。

「聞かせてくれる?」

「嫌であります。」

しばらくの沈黙…。

「あの〜。」

「冗談であります。」

本当、この人は何考えてるのか分からない…。

「そもそも知り合ったのは10年ほど前であります。」

10年!?
じゃあアルシェリルが魔の者を作り出してすぐって事!?

「まあ…それは置いといて。
私にコンタクトを取ってきたのがつい最近でありました。」

「それがあの日って事!?」

コクリとうなづき話しを続ける。

「後は見たままであります。」

えええええええええええええ。
何も分からない…。

「ど、どうしてアーリンさんは知り合いなの?」

「昔の付き合いであります。」

アーリンさんがアルシェリルと仲間!?
そんな…。

にやりと笑ったアーリンさんが凄い勢いで迫ってきた。

「な、なんですか、アーリンさん。」

「可愛いわね…ほんとに。」

口調が違う!?

「これからもリアをお願い。」

その顔は…リア!?
そっくりだった。

「それではそろそろ失礼するであります。」

「アーリンさん…。」

「何も心配はいらないのであります。
あの人たちに任せておけばアルシェリルは
もうたぶん何もしてこれないのであります。」

!?
あれ…アーリンさんってアルシェリルの仲間じゃなくて…
天使たちの仲間だったの!?
そういえば…12時に待ち合わせ…。
12時に来たのって天使!?
私が勝手に勘違いしてたのかな…。
けど…アーリンさんって何者なの。
また全然わからないままだし。

「こほん…こほん、こほん。」

わざとらしく咳払いをするのはリア…。

「何してんのよ、入ってきたら。」

「あれー偶然だね、ノエル。
久しぶりー。」

まったくわざとらしい。
けど懐かしい顔。

「何してたのさー。」

リアがノエル目掛けて飛び込んでくる。
ノエルもそれを受け止めて
久々の再会にぎゅ〜をする。



「へーそんな事があったんだ…。
じゃあその…アルなんたらってのは
もう魔の者を作れないって事だよね?」

そうか。
そうなるんだ。
だったらこれで魔の者が出来る可能性って
自然に魔になる人だけ…。

「ねえ、なんか大人っぽくなったんじゃない?」

「そう!?
リアが子供のままなんじゃない?」

怒るリアがまた子供っぽさを増すって事
きっとリアは気が付いて無いけど
やっぱりこんなリアが大好き。
アーリンさんがどこの誰だろうと悪い人には見えないんだし、
リアの事凄く大切にしてる。
今だって外にリアがいるのに気が付いて話してたんだ。
なんか不思議な関係…。

私が入る隙間なんてどこにあるんだろう。
このままでも良いのかな。

「ノエル、今日はうちでぱーっと何か食べよう。」

「うん。」

…そっか。
何も考える事なんてないんだ。
リアはリアだから。
自由にしてれば良いんだ。





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