アリスがいない。
野盗に任せてやり過ごしたのは良いけど
アリスがどこにもいない。
もう他の誰かに捕まってしまったのかもしれない。

ノエルはとにかく手当たり次第に辺りを探した。

見る人全てが賞金稼ぎに見えてくる。
笑顔で笑ってるおばさんも
無邪気に遊んでいる子供も
店先で商売をしている男も
皆偽りの笑顔で誰も本当の笑顔なんてしていない。
そう見えてくる。

頭が痛い…。

『ノエル。
私が変わりに探そうか。』

!?
貴女…アクア?

『…。
警戒しなすんな。
割と共存してるつもりなんだけどね。』

何か用なの…。

『私ならすぐにアリスを見つけられる。
このままじゃまずいんだろう?』

確かにそう…早く見つけないと。
けど、こいつが素直に肉体を戻してくれるかなんて…。

『後はあんた次第さ。
あんたが今出来る事。
それはなんだい。』

!?
そうね…。
わかったわ。

『了解。』

アクアと入れ替わるとすぐに動き出す。
そして、まっすぐにある場所へ行く。

そこはアリスの家。

「何者!?」

瞬殺。
次々と人が死んでいく。
家にいる者全て。
証拠も何もない。
男だけでなく女も子供も容赦しない。
その家にいる全ての生き物の動きが止まるまで
アクアは血を味わった。

「足りない…。
まあ、良いか。」

アリスの家は戦争でも起きたかのように荒れ果てた。
だが、それをやったのがアクアだと知っている者は誰もいない。

アクアは元の場所へと戻ると約束通り
体をノエルへと返した。

『仕事はした。』

え!?

辺りを見てもアリスはいない。

どういう事!?

『後はゆっくりアリスを探せば良い。』

!?
まさか…。
ノエルには分かった。
一番簡単な事をアクアがした。
アクアの得意な方法で。

貴女!?
なんて事をしてくれたの?

『何を怒る?
敵を倒す。
当たり前の事だろう。
証拠はないさ。
お前が黙っていればな。
まあ、お前が名乗りでたって
その相手を私が殺すけどな。』

……最悪だ。
またこの手で…。
いっそう私も消してくれれば…。

泣きたくなるのを必死に堪えて
ノエルはアリスを探した。


アリスはちゃんと隠れていた。
どこにもいないと思っていたのに
別れた場所からすぐそこのぼろぼろの箱の中にいた。

「良かった〜。
ノエル全然来ないから心配しちゃった。
!?
どうしたの?
怖い顔して…。」

「ううん、なんでもないの。
早くここから逃げよう。」

「うん。」

言えない。
このまま遠くへ行けば…。




私とアリスは街を出て遠くの村へやってきた。
アリスの事なんて知らない人たち。

のどかで毎日が同じ日…。
そんな場所。
落ち着ける風景。

「ノエル。
ここなら平気なの?」

「うんうん。
当分ここにいよう。」

「うん。
ノエルと一緒ならどこでも平気だよ。」

本当の親ではないとしても
アリスの人生の大半はあの家で過ごしたはず。
だったらアリスが好きだった人だっていたはず。
何も関係のない人まで…。
私はどうしたら良い…。
この子の側にいる資格なんてあるのかな。

無邪気にしているアリスを見ると
このまま黙っている事でアリスが幸せなら…
なんて思ってしまった。

とりあえず…逃げる必要はなくなったんだ。





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