2008年9月20日(土)

朝、衝撃的な事件。
もう退院らしい。
理由は分かる。
お金がない。
治らないなら入院していても意味ない。
リハビリなら家でも出来るし
たまに来るだけならお母さんと来れば良いんだ。

「より子ちゃん。
しっかりリハビリするのよ。」

「みやこさん。
色々ありがとう。」

これでお別れじゃないけどなんか寂しい。




家まではお母さんの運転で帰る。
運転もできなんだ〜。
楽しみだったのにな…。



自分の家。

見えなくてもそれなりには分かる。
玄関を入って階段が右側にある。
それを登ったら私の部屋。
下には居間と台所とお母さんの部屋。
それからお風呂とか…。
たぶん、見えなくてもだいたいは分かるはず。

「大丈夫そう?」

「うん。」

ゆっくりと家の奥へと進むと
なんとなくはイメージできる。

1歩ずつゆっくり進むと居間にたどり着いた。

「とりあえず家の中くらいはしっかり歩けないとね…。」

「うん。」


私はお母さんに見てもらいながらゆっくりと自分の部屋まで来た。

「大丈夫そうだね。
とりあえずお昼の用意してくるから大人しくしててね。」

「うん、分かった。」

お母さんが部屋から出ていった。

私は記憶を頼りに部屋の中を手探りで色々探してみた。

リモコン。
テレビも見れないんだ…。
ラジオ…これは必要。
携帯…。
パソコン…。

かばん…学校なんていけないや。
いらない。
教科書…置きっぱなしだし…。
見えないから取りに行く意味もないや…。

てか全然あれから誰も来ないし…。
携帯にメールとかきてるのかな。
着信も見えない…。

けどこっちからは掛けれるかな。
試しに0番の登録してるあいつに掛けてみた。

ぷるる〜ぷるる〜

出ない。
あいつ何してるんだ…。

1番はお母さんだし…。
後はわかんないや…。
そのうちかかってくるかな。


お昼。
久々にお母さんのご飯。
そんな気がする。
何日かだけど病院で食べてたし
普段も友達と食べたりなんて事もあって
そんなにお母さんのご飯なんて意識してなかったけど
椅子に座って食べようって思うとなぜだかじんわり来た。

「より子?
どうしたの?」

「え?」

ふと温かいものが私の頬を流れている。
どうしたんだろう。
別になんでもないのに。

「なんでもないよ。
ちょっとゴミ入ったかな。」

私は目をぐしぐししてごまかそうとしたけど
お母さんをごまかすなんて出来はしない。
そっと後ろから抱きしめてくれるお母さんは
とてもとても温かかった。


私は点字よりも普通にノートに文字を書く練習をした。
元々そんなに汚い字でもなかったから
目が見えなくてもそれなりに書けてはいた。

りゅうた君にはこれで伝わる…。

けど、もっと普通に会話したい…。
なんか方法ないのかな…。


午後。
と言っても夕方。
学校へ行ってきたお母さん。
そう。
普通の高校だったから私の退学届けを持って行ったのだ。

仕方ない。
後、半年しかない学生生活だったけど
ちょっと早く終わっただけ。
見えないんじゃテストも出来ない…。
授業だって無理だし、学校へ1人で行く事も出来ない。
あーあ。

けど、ある意味気は楽になった。
あれもこれもしないと行けないって
焦っていたのはあったけど周りが周りなだけあって
皆適当にしてた。
焦る事も出来なくなったんだからまずは1つ1つするしかない。

まずは家の事くらいまともにできるようにしよう。
自分の事くらい…。

その日から掃除、洗濯、洗い物。
家の中でできるものはしてみようって思い始めた。


第07日〜あ〜やる気ない〜


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