2008年10月7日(火)

赤い血。
見えないのなら痛みもいらない。
なのにとっても痛い。




注射。

「やだ〜注射嫌い。」

誰かが泣いてる。

病院は広くて色々な科がある。
もちろん内科もあるわけで…
たまにみやこさんと散歩していると聞こえてくる。

「昔、注射って嫌いだったな〜。」

「みやこさんが!?」

「あのね〜私だって小さい頃は嫌いなものだらけだったんだよ。
注射好きな子もいないだろうけど…。」

そういえば私も嫌いだったかな。
見てるとなんか気分悪くなったりもしたし…。
今じゃ見えないからか色々あったからか痛いなんて
ちっとも思わないや。

何に対しても知らないうちに慣れていたりする。
不思議…。
そう言えば…父親だっていないのに
知った頃にはもういなかったわけだから
全然違和感なかったけど…
今考えるとそれもこれと同じなのかな。

そのうちお母さんがいなくても平気になったりするのかな…。

「さて、そろそろ戻りましょうか。」

「ちょっと待って。」

「より子ちゃん?」

私はその声の聞こえる方へ歩いて行くと
声の前で止まった。

ここってホール?

周りはがやがやとしていて色々な人の気配がする。
けど、ここに間違えない。

「ちょっとより子ちゃん!?」

「何か御用かしら?」

たぶん注射器を持っている看護師さんの誰か?
声だけじゃ誰か分からない。

「その男の子と少し話しをさせてもらえませんか?」

「はい?」

「より子ちゃん、ちょっと!」

みやこさんがぐいーっと私を引っ張ってその場から
遠ざけようとする。

「止めて!
みやこさん。」

大声を出した私に一瞬辺りが静まり返った。
すると自然と私を掴んでいた手の力が弱まっていった。

私はもう一度その男の子の前へ行くとそっと手を握ってあげた。
そしてみやこさんをつんつんした。

「あ!?」




「よくあんな事思いついたね。」

「うん。
昔、お母さんがしてくれたの。
学校で教えてくれれば良いのにね〜。」

私はあの日以来、初めて普通に笑っていたかもしれない。


第24日〜ぼーっと〜


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