「そんなもの信じられるかっ。」

何もなく穏やかだった一日を締めくくるように夕暮れも過ぎようという頃。
そこは広い屋敷の一番長い廊下のちょうど真ん中にあたる場所。
灯りのともるランプを間に話している二人がいる。

苛立った声で発した相手は長身の黒いコートの優男。
落ち着いた感じには見えるがまだ少年のようにも見える。
変わって苛立っている本人の方だが、
ショートの金色の髪に赤いヘアバンド、赤い瞳、濃い青に薄い赤のラインの入った服に白いマント、
青の強い緑のスカートをはいている、歳は14になる少女。

「そもそも、運命なんてないっ。
そんなものあったって私には関係ないっ。」

困った顔をする優男。

「そう言われてもなぁ・・・。
生まれてから死ぬまで誰もがその運命の道を歩いているに過ぎないんだよ。
運命を変えようとして死んだって。
できもしないことをしようとしたってそれが運命。
誰も未来を知らないけど最初から決まってるさだめ。」

「運命、運命、運命・・・そうやって逃げてるだけじゃないかっ。」

ますます苛立ちを示す少女が壁を握った拳で叩きながら言った。
優男はまったく動じることもなく話す。

「だったら変えようとしてみたら良いじゃないか。
何をどうしたら変わる?
本来ある未来と違う未来なんて知らない。
運命を変える事なんか出来やしない。」

「じゃあ運命って何?
何をどうしても運命?
何があるかもわかっていないのに何を運命だと言うの?」

「君には歴史を守ろうという気持ちはないのかい?」

「歴史?
皆で仲良くなぁなぁが良いって?
それこそ無駄な歴史だわ。」

やれやれと言うように両手を頭の横まで上げて答えた。

「リア、そこまで言うならここを出る覚悟もあるのか?」

優男の顔が変わった。
さっきまで穏やかだった顔つきが一気に豹変していく。

「ニア兄さん本気?
これも運命だと?」

「問答無用っ。」

両手を胸の前で重ね、ゆっくり離してゆくと一本の日本刀が現れ
そのままリアへと向かってくる。
リアも同じような体勢を取ると日本刀が現れた。

ニアの長めの日本刀に対してリアのはかなり短い。

勢いよく向かってきたニアの攻撃を上手く受けとめたまでは良かったが
その瞬間、腹を思いっきり蹴られ壁に叩きつけられた。

「こんなものか?」

にやりと笑ったリアにニアが気がついたのは両膝が地についたときだった。
蹴られる瞬間にリアは自分の刀を天に向かって放り投げてた。

「これでも運命だと?」

「行くが良いさ。
次会うまでにしっかり戦えるようになっておけ。
うちを出ると言うことがどういうことかその時知るさ。」

腹に刺さったリアの刀を抜きリアに返すとそれ以上何も言わずにその場から去った。



第01話〜それは偶然?〜

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