あの後、ノエルとは約束をして別れた。
とても大切な約束だ。
【おきて】でも【運命】でもなく【約束】だ。
始めて自分で決めた…黙っていてもやってくる運命とは違う。
自らの足で作らないと消えてしまう道。
私は気絶したままのククルに近づきながら思い出してみた。


「さっき言っていた橋渡し…あれは?」

「私の一族が代々継いでいる役目…。
迷える魂を悪魔に変えさせないために10年に1度、
1の月の満月の日にこの教会から天へと浄化させる。」

1の月と言えば来年になってすぐの事だ。
つまり、来月の満月の日という事になる。

全身傷だらけのノエルは自ら手当てをしながら平然と答えるが
尋常ではないくらいの血が流れたはず。
だが、どうして良いのかわからないリア。
今まで自分から誰かのために何かをする事なんてなかったリアだから
どう接して良いのか分からないでいる。

「道案内でもするってこと?」

「そういう感じ。
私が月に1、2度ここへ来る事で魂は迷わず1の月の満月の日まで
さ迷うことなく、悪魔にもならずに天へ向かえる。」

リアの脳裏には似た感覚があった。
ずっと【運命】に踊らされていた自分とこのノエルの【運命】。
何が違うのだろう。
自分がノエルなら…そう考えても分からなかった。

「なぜノエルの一族がそのような事をしている?
運命に流されているだけではないか?」

「大人になった人なら迷わずに天へ昇れるけど
死んだ事すら気がつかないような子供は
未だにこの世にとどまり続けている。
この世に現れる悪魔はほとんどが子供。
そんな悲しい事実を知ってどうして受け入れずにいられるか。
私はこの運命を受け入れる。」

「したい事も出来ずにそれで良いのか?」

リアが言った途端に辺りの空気が再び冷え始めた。

「貴女には分からない。
あれを知らない貴女には。
覚えていたなら1の月の満月の夜再びここへ…。」


あれが約束と言うものなのかは分からないが勝手にそう思う事にした。
運命なのか。
自分の道なのか。
それはあまり関係ないのかもしれない。

「ククル…。」

倒れて気絶したままのククル。
起こそうとするリアの手が止まった。

起こしてどうすると言うのか。
このまま寝かせておけばきっと朝になって家に帰るんじゃないか。


【どうせ誰も僕の事なんて見てないのさ。神様だって僕を見放したんだから…。】


起こすのを止め、一人教会を去ろうと決心しようとした時
あの言葉を思い出した。
ククルがここへ来てつぶやいた言葉。

「ククルの過去にも何かあると言うのか。
それとも今…。」

ククルも運命という鎖を断ち切りたくてここへ来たのかもしれない。
ここで助けるのがククルにとっていい事なのか
それとも、このまま自分で運命の鎖を断ち切らせるのか迷った。
少なくても一緒にここを出ればこの町からは出る事は出来る。
それからどうする?
一人で町から出る勇気もない子供がどうやって一人で生きる?

リアは起こすのを止めそのまま教会をあとにする事にした。
最後にククルの手を握りおまじないを掛けた。


第04話〜普通の人?〜


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