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街がすぐそこまで来ると
明らかに出てきた時とは違った雰囲気だった。
初めて来た時ならその変わり方に
気がつくこともなかったかもしれないくらいの
変化だったが何か違和感を感じた。
すれ違った人一人見ても何かが違う。 

「何かおかしい。」

ほんのわずかの間に何があったというのだろう。

気になるのは二つ。
私がいた時とはまるで違う場所のように感じる。
なのに誰もその事を不思議と思っていないようだ。
それと、じゃこうの言っていた魔の気配。
私にはそれを感じることが出来ない。
最初からいたのか私が出ていた間に入り込んだのか
それすら不明だ。

「リア、あれは?」

じゃこうが見るほうにはあの廃教会。
あそこから魔を感じるらしい。
だったらノエルは!?

そう思うといてもたってもいられず
じゃこうが肩から振り落とされるのも無視して
廃教会へと急いだ。

かしがった扉を思い切り開くと中は
つい前に見た景色ではなく
長椅子はほとんどが原型をとどめてはおらず
あの綺麗だったステンドグラスも無残な形をしていた。
それにあの像もそこには見当たらなかった。

「こら、リア。
わしをおいていくでない。」

かけつけたじゃこうが廃教会内部を見て
私に怒鳴ったがその顔は固まっている。

「なぜ、あれがこっちに…ありえん。」

リアはじゃこうの見る方を
じっくりと見るがそこには何も見えない。

「いったい何が見えてるの?
私には見えない。」

声をかけられ我に返るとじゃこうはリアを
廃教会から一度外へと引っ張って行った。

「どうしたっていうの?」

「よく聞くのじゃ。
ここはさっきまでの世界であって別の世界じゃ。」

またまたわけが分からなくなる。
簡単に言うと…。

世の中には常にいくつもの選択肢があって
そのどれかを常に選択して世界が動いている。
今いる世界を実世界とすると
それ以外は虚世界。
だが、そのどれもが実際に存在している。
自分が選択しなかった選択肢を選択した世界も
どこかには存在していると言うこと。

「自分の世界が真っ直ぐに伸びる直線状あるなら
そこから全て枝状になって分かれている世界がある。」

なんとなく理解はしてきた。

「で、いつどうやって虚世界の方へ来たのかは?」

肝心な話になると口を閉じる。

「考えられるのはわしがリアを脅かしたとき、
別の何かの力が作用したかもしれぬ。
だが、通常…
世界をまたぐ時ボーダーを通るしかないのじゃが…。
世界と世界の間には普段ボーダーと言う境界が存在し、
そこには強い力が発生しておる。
その衝撃は常人が耐えられるものではないくらいのものじゃ。」

正直そんな衝撃を受けた記憶はない。
だから、じゃこうにも理解できていないのだろう。

「まあ、良いじゃない。
せっかく来れたんだし虚世界だろうがなんだろうが
私にはどっちでも同じだわ。」

「馬鹿な事を言うでない。
この世界のリアも今ここに存在しているのだぞ。
同じ人間が世界で出会うと別世界から来た方は消滅するのだ。」

そう言われてもあまり実感はなかった。
本当に別の世界だとしてもあの屋敷にいる自分の世界なら
どうこうする必要もない。

「問題はそれ以外にもあるのじゃ。
どうやって来たのかはもはやどうでも良いが
戻る手立てがないのじゃ。
さっきも言ったようにボーダーを通らないと
世界を行き来する事は出来ないのじゃ。
通るためには強大な力の衝突が必須。」

その時点で考えられるのは1つになっていた。
廃教会で待っていればいつかはノエルが来る。
その時に立ち会えればなんとかなるかもしれない。

「あの廃教会は危険じゃ。
さっき見えないと言っておったが
あそこには魔が存在していた。
実体を現してはおらんかったが我らなら見えて当然じゃな。」

じゃこうが偉そうに言うのを無視してもう一度廃教会へ向かう。

「こら、わしの話を聞いていなかったのか?」

真昼間にもかかわらず私は手を交え刀を出すと
廃教会の扉を吹き飛ばし中へ進入した。

「待て、リアよ。
見えぬ者を切れるわけがなかろう。」

自信はあった。
どこからそれが沸くのかなんて自分でも分からない。
だけど、出来るような気がした。

リアは微かに感じる何かを目掛けて刀を振り下ろしてみが、
何かに当たる感触すらなく地に振り下ろされた途端、
横から風圧を感じた瞬間体から熱いものが流れた。

「リア、しっかりするのじゃ。
奴はまだ完全に覚醒しておらぬ。
破壊するのなら今しかない。」

自分の血じゃない…。

それはじゃこうの血だった。
リアをかばいじゃこうが流した血しぶきがリアを赤く染めていた。

「じゃこう…。」

話はできるが動くのは困難のようでリアの前でぐったりしているが
迷っている暇はなかった。

何かが今にも向かってきそうな気配を感じるが
その方向が分からない。

「右じゃ。
奴は右におる。」

目を凝らすと微かに空間が歪んでいるのが見える。
今度こそ。
と言う感じで向かっていくが再び刀は空を切る。

その後もじゃこうのおかげで何とかかわしつつ
攻撃をしかけるが当たらない。
リアの体力も限界に近づいた。

「リアよ。
ここは一度退散するのじゃ。
このまましていても…なんじゃそれは!?」

じゃこうが驚いた先にはリアがいる。
リアは刀には薄緑色の炎がまとわれている。

「リア!?」

じゃこうが話しかけても反応がない。
だが、動き回る魔の者の動きを把握しているのか
合わせて動いている。

そして魔の者の動きが止まった瞬間。
リアの手が動いた。
それもほんの少しだけである。

それだけで十分だった。
その薄緑色に染まった炎は真っ直ぐに魔の者へと向かい、
直撃した。


リアが目を覚ましたのはそれから数秒後。
何が起こったのかすら覚えていないようだった。

「その力があれば戻れるかもしれぬが…。」

言いたいこと分かってる。
じゃこうは危険視している。
きっと自分で計れない強さは私だって怖い。
あのニア兄さんもそう。
いつも私の上にいた。
あの見下したような目…。
あれも嫌いだった。
だけどいつの間にかニア兄さんも
私を警戒していた。
その理由がこれなのかもしれない。
今の私ではあれを倒すなんて事は難しいはずだった。
それを一撃でなんておかしい。
きっと過去にも同じことがあったんだ。

「気にするな。
今はこの場を切り抜けたことに感謝じゃ。」

痛々しいじゃこうがたまらずかわいくてまたハグをしてやった。


第08話~猫は肉食?~


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