カーテンの隙間をぬって太陽の光が差し込んできて
いつもと同じ目覚めがやってくる。

「起きろ、リア。
いつまで寝ているのじゃ。」

リアと違って目覚めの良いじゃこうは
いつまで経っても起きる気配のないリアを
起こそうと奮闘中だがあれこれしてみるものの
一向に起きそうにない。

「虚世界に来ているというのになぜ熟睡していられるのか…。」

「う〜ん…。」

「お、起きたか!?」

がぶぅ〜〜〜〜。

「ふぎゃあああぁぁぁ。」

「ソーセージ…。」

「コラ、ソレハワシノ大事ナ尻尾ジャ。」

弱弱しく言ってみてもリアには何も聞こえていないらしく
二度三度かまれた後、
じゃこうは最後の手段に出た。


「痛い…。」

「ったく、自業自得じゃ。
わしの自慢の尻尾を…。」

「だからって顔引っかかなくても良いでしょ…。」

リアの顔には斜めに3本の引っかき傷。
さすがにそこまでされれば嫌でも目覚める。

「リアが早く起きないからじゃ。」

「じゃこうが早すぎなんだよ。」

「なにを言っておる。
もう他の客は皆朝食を済ましたようじゃが?」

「ぶぅ〜。」

言葉を無くしたもののようやくしっかりと目を覚ましたリア。
今度はお腹が空いてきたらしく辺りをきょろきょろするが
もちろん部屋の中には一切食べ物などない。

「じゃこう…取ってきてよ。」

「なにを言っておる。
わしが行ったら朝食どころではなくなるじゃろ。」

猫のくせにさっさと行けと言うように
手で早くいけいけとあおってくる。

「仕方ないなあ…。」

ふら〜ふら〜と部屋を出て下の階にいる店主に聞くと
すぐに一人前と一匹分の朝食を用意してくれた。

「猫には猫の食事…。」

じゃこうが不満そうに言う。
焼き魚一匹。

「猫が魚好きなんてのは嘘なのにまったく。」

「ええ!?」

思った通りの反応を見せてしまったリアは
少し悔しがるもじゃこうの話を聞いた。

「猫は元々トラじゃ。
肉食のトラが魚を食うわけないじゃろ?
猫とて同じこと。」

言い終わると美味しそうにその魚を食べていた。

リアは一人
窓の外を見ながら思っていた。

昨日泊まったにもかかわらず
店の者がリアをまったく覚えていないのを見ると
ここが虚世界だという事実に少し戸惑っていた。


第09話〜泉はどこへ?〜


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