「やはりお主だったかノエル・ヴァン・シュタイン。」

知り合いなの?って言う間もなくノエルは
驚いたように反応した。

「じゃこう?
なぜリアと…。」

じゃこうが何かを伺っている。

「ノエル…どんな悪戯じゃ?
なんの為に虚世界へ送ったのじゃ?」

中央に立っていたノエルが観念したかのように
長椅子へ座ると口を開いた。

「あれは賭けだったのよ。
私が行くかリアが行くか。
私のいない世界では悪魔が増え続けるしかない…。
だから…だから…。」

じゃこうは何も言わずに後ろを向いてしまった。
私は…私は何を言えば良い?
何も分からない。
あの約束は…。

「リア。
勘違いはしないで欲しいの。
貴女なら私の変わりに行けばきっと成仏させてくれる。
そう思ったから…。
そして、運命に逆らう者として何が正しいのか
私も知りたい…。」

何が正しいのかなんて分からないんだ。
私の運命…。

結局ノエルとは話す事も出来ないで
しかも、じゃこうとも一緒にいる気分じゃなく
一人でぽけ〜っとしている。

分からないことだらけ。
世界がいくつも存在する事。
それらを自由に行き来できる事。
悪魔が死んだ人間から生まれる事。
他にも色々…。

世界がいくつもあるなら他からここへ来る事も…。

リアはハッとした。
ノエルが他の世界で自分が存在していない事を知っていた。
それはつまり…
この世界へ来たノエルと鉢合わせて
あっちのノエルが消滅した。
それが自然な考え。
自分の世界にいれば自分が消える事はないんだ。

やっぱり利用されてた気がしてきたリア。
はぁ〜っと深くため息をすると考えている事も嫌になる。

そんな中にも窓の外にはいつもの光景が広がっている。
思えばあらゆるものが普通だったあの頃。
何も考えずに
何もかもが当たり前のように進んでいた時間。
あれをしたら次はこれ。
決められた道…。

世界がいくつも存在しているのも未だに不思議。
今選択している選択肢以外を選択している自分もいる。
もし…あの時、ノエルを倒していたら?
もし、ノエルに負けていたら?
もし、ククルを起こしていたら?
もし、森へ行かずにじゃこうと会わなかったら?
もし、悪魔に殺されていたら…。

どれも存在する世界なのか…。
虚世界で自分と会うと消滅するのは本当だろうか。
ノエルの事を考えると本当のようにも感じるけど
何か違和感のようなものも感じた。

選択。
自由に行き来できるにしてもかなり制限はされる。
虚世界へ行けるのはほんのわずかの者のみのはず。
向こうからノエルが来たのならどうやって…。
じゃこうとは知り合いだったらしい…
それを考えると泉を使ったのかもしれない。
少なくても行き来する方法は知ってるんだ。
もしかすると私ではなくノエルが
あっちの世界へ行っている世界もあるのかもしれない。
これも考えるほど謎ばかりが増える…。

悪魔の事。
人…それも子供から生まれるのが大半。
そんな事すら未だに信じられない。
これから出会うかもしれない悪魔が
全て元は人…。
なぜ人を襲うのかも分からない。
人じゃなくなったから倒す?
人を傷つけるから倒す?
悪魔ってなんだろう…。

それに私の力。
あの暮らしの中じゃ普通…。
誰もがあの力を持っていて
それが自然な事だった。
けど、それは違って…。
それこそ悪魔の力にも見える。
自分の事すら知らない。
知らない事だらけだ。
ピンチの時に出てくるあいつだって…。
あれは絶対私じゃない…はず。

太陽がだいぶ傾いてきた。
はぁ…今度は小さなため息をして
ご飯も食べずに深い眠りについた。


第13話〜夢には目覚め効果あり?〜


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