暗い。
真っ暗だ。
ここはどこ?
小さな明かり…。
広いのか
それとも狭いのか
それすらも分からない真っ暗な中に
ほんの小さな明かりが見える。
音はまったくなくて歩いている感覚もない。
ふわふわ…そうそんな感じ。
まるで意識だけが勝手に旅をしているように…。
そんなところで目が覚めた。
夢にしてははっきり覚えている。
夢なんてほとんど見ないのに…。
毎朝寝起きの悪いリアにとって途中で終わったとしても
夢を見て起きるなんて事自体が本当に稀だった。
きょろきょろと辺りを見てもじゃこうの姿はない。
それどころか部屋へ来た形跡すらない。
ずっと廃教会でノエルと話し込んでいたのだろうか…。
いったいどんな知り合い…。
そんな事を考えながらシャワーを浴び一人朝食を取る。
珍しく良い目覚めだと言うのに
さっぱりしない。
ずーっと色々な事が頭を巡っては更にリアの頭を悩ませる。
乾ききらない髪をめんどくさそうに乾かしつつ
窓の外を見た。
「えっ!?」
とっさに窓の側から離れるとリアの体が震えだす。
「ニア兄さん…。」
一瞬だったが見間違えるはずがない。
あのいつでも冷静な目。
似合いもしない全身真っ黒な格好。
そしてこの場にそぐわない雰囲気。
間違いない、私を連れ戻しに来た!?
リアに考える時間はない。
何よりリア自身も目立つ格好をしている。
町の誰かに聞けばすぐにリアの情報は流れてくるはず。
一秒でも速くこの場から少しでも遠くへ行かなくては…
そう思った時冷たい殺気がリアを襲った。
しかし、それはニアのものではなく別の誰かのものだった。
まったく身動きの取れなかったリア。
扉越しに直接狙ったと思われるロウソクのようなそれは
リアの頬をかすめ壁へと突き刺さっている。
小さく空いた扉にある丸い穴からは確かに誰かがいる。
赤茶系の服でも着ているようでその色だけが
いつまでも部屋の前を動かない。
来る!?
次の殺気にはしっかり反応したリアが飛んでくるそれを
紙一重で避けると今度は扉を蹴破って
そいつが姿を現した。
朱色のロングコート。
朱色の長髪。
どこまでも朱色が好きなのかと思うリアは
体勢を整える事も出来ないまま
飛び込んできたその男の蹴りをくらい
壁まで吹き飛ばされた。
「立てよ、リア・ノート・ヴァルティス。
俺は寝てる奴を襲うほど卑怯じゃねえ。」
言ってる事が無茶苦茶だ、こいつ。
扉越しに攻撃してきたくせに…。
けど私の名前を知ってるって事は刺客に違いない。
リアは考えた。
ニアが来ているのに更に一人…。
それは不思議だった。
なんの為に二人も…。
しかし考えている暇はない。
今はここをなんとかしないと…。
「ほら、立ち上がれ。」
リアは立ち上がる前に刀を出し
そのままその男に向かっていく。
一直線に向かっていったがいつの間に召喚したのか
さっきのあれが無数に出ている。
それはリアの刀がその男へ届く前にリアを串刺しにした。
第14話〜そいつはやってきた?〜