そこはまるで空。
空なのに浮いている。

リアは浮力がそこまであるわけでもないのに
地の見えない空をふわりふわりと舞い降りてゆく。

ふと、泉に落ちたはずなのにと思うが
その心地よさにどうでも良くなる。

どこまでも青く
どこまでも続く
ここはどこなんだろう。

リアは今までに体験したことのない感覚に酔っていたが
それは長く続かない。

他になんの気配もなかった空間に
突如何かが入り込んでくる気配を感じた。

じゃこうの気配とは違うまがまがしい気配。
そういえば一緒に飛び込んだじゃこうの姿もない。

まだ気持ちがふわふわとしたままのリアだったが
次第にその気配が近づいてくるにつれ
我を取り戻していった。

遠くからそれが徐々に見えてくる。
かなりの速さで向かってきているのが見える。
明らかに自分の方へ向かっているのを知ると
刀を握り締め警戒する。

冷静になれ、リア。
今、私は実世界と虚世界のハザマ
ボーダーにいるはず。
その中で他に誰かがいるということは
同じく世界の間を行き来する者。
いったい誰なんだ。

そうこうしているうちにその何者かが
リアの目の前にやってきた。

その者は真っ黒でぼろぼろなコートをまとってる
長身にぼさぼさな長髪、
体格はほっそりとした男。
そして何よりも目を引いたのは
とても細く長い刀を持っていた。

まがまがしい殺気を持つその者は一切口を開かずに
そのままリアへと刀を振るった。

その速さに圧倒されまともに受けきれずに
数メートル吹き飛ばされると
体勢を整える間もなく2撃目3撃目と
連続で刃がリアを襲う。

リアにとって今、目の前にいるのは人。
まがまがしい殺気を持っているとしても
中身が人ではない者だとしても
その容姿は人だった。

数え切れないほどの斬撃が続いた。
耐え切るにはあまりにも力の差があり
徐々に追い詰められるが
リアは違和感を感じていた。
自分の中にふつふつと燃える何かがある。
動くたびにそれがドクンドクンと脈打つのを
抑えきれずに爆発すると
我を忘れリアの中に眠るそれが動き出す。

その速さはまがまがしい殺気を持つ者よりも更に速く
その者すら圧倒する。
そして一撃。
その者が真っ二つに切り裂かれた。
と、思ったが影が光にかき消されるかのように
その者の姿とまがまがしい殺気は一瞬にして
その空間から消え去ってしまった。


第11話〜何が違うか分からない?


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