「無事抜け出せたようじゃな。」

気が付くと泉の前でうつ伏せに倒れていた。
どろだらけの顔をどろだらけの手で
ぐいぐいとふき取ってもまったく綺麗にはなるはずもないが
それでもぐいぐい。

「あれなんだったの?」

ぐいぐいしながらじゃこうに聞く。

「たまに漂っておる魔の者の意識じゃ。
実体ではないから普通に斬っても無駄なはずじゃが
あの力なら平気じゃったか。」

あの力。
じゃこうはあれの何かを知っているんだ。
私の中に眠る凶暴な運命。

「自分でももう気が付いているようじゃな。」

こくりとうなずくとじゃこうがいつになく
まじめな顔をしている。

「あれはおそらくリア自身じゃが
力に頼りすぎて自分を制御できていないだけじゃ。
過去か前世かは分からんがどこかで
その力に恐れておるに違いない。
それを吹っ切らぬ限りは無意識の中でしか
あの力を使うことはできないじゃろう。」

怪しいー。
実に怪しいー。

リアはじゃこうを怪しみたっぷりの目で見てやった。

「な、なんじゃ!?」

「まさか、知っててわざと
その力を引き出させたわけじゃないでしょうね?」

「ばかもの!
わしがそんなことして何になるというのじゃ。」

慌てて否定するのは何か隠している証拠だ。

「ただリアにはいずれあの力が
必要になるかもしれぬと思っただけじゃ。」

「あ〜〜やっぱりそうなんだ。」

べちゃ

リアが投げた泥の玉はじゃこうの顔に直撃した。

「こら、何をする!?」

じゃこうがすぐに言うとリアは悲しい顔をしていた。
その顔は今までに見たことのないくらいに
悲しく寂しい顔。

「どうしたのじゃ?」

「じゃこうが悪いんだよ。
最近自分でもあれを感じるようになってる。」

「リア…。」

「自分の意識とか関係なくて…
いつもピンチになると勝手に出てくる。
そりゃいなかったら死んでるかもしれないけど
二度と戻れないんじゃ…って。
だから出来るだけ我慢してる。
二度と入れ替わりたくなんてない…。」

いずれやってくるその時まで
運命にどこまで逆らえるか。

話しながら歩くと町まではすぐだった。
前来た時と同じ感じがする町。
何が違うかって言われると言葉では言いようがない。
きっとククルもどこかにはいるんだろう。

そう思いながらリアとじゃこうは廃教会へ入っていった。


第12話〜分からない事?〜


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