ついにあれが発動した。
リアの心臓をドクンドクンさせ
もう一人のリアが現れた。
姿は変わらないが圧倒的な力だった。
近づいてくるそれを持っている刀で遠くから
サッと一振り。
「やめてーっ。」
刀から出た剣圧だけでそれは真っ二つになってしまった。
刀を振り下ろした瞬間から我に返っていたリアは
自分が何をしたのか覚えている。
意識を乗っ取られている間も必死に
我を取り戻そうとしていた。
急いで真っ二つになって崩れ落ちる
それに近づこうとしたが
地に落ちる前に砂のように
それは消え去ってしまった。
静まり返る廃教会に涙の音だけが響いた。
それから3日。
誰とも会わずにずっと宿に引きこもった。
自分のせいで友達が死んだ。
自分の我侭で死なせた。
それが元から魔の者だったとしても
確かにあの時までは一緒にいて
一緒の時を刻んでいた。
だけどおかしい…。
どうしてノエルがいるのに魔の者が存在しているのか。
絶望に浸りながらも頭の中では
どこかで自分に言い訳できる方法を考えている自分が嫌だった。
どんどんどん
どんどんどん
「リア?」
ノエルの声…。
けど戸を開ける気分じゃなかった。
「入るよ?」
どっちでも良い…。
無言のままでいるとずかずかと入ってくる。
ノエルはリアがちょこんと座っているところの
すぐ前に同じようにちょこんと座った。
「ごめんね、リア。」
えっ!?
ひょっとすると顔にもその表情が出たかもしれないと
思いつつも声にはしなかったリアは目を合わせないように
しながらノエルが話しだすのをただ、待った。
「もう知ってると思うけど
虚世界では私が存在しないの…。
だから無断だと分かっていても行き来しないといけない。
それが私のさだめと思ってる。
確実な方法もなくてリアには迷惑かけたわ…。
けど、そのせいでこんな結果になるなんて…。
本当にごめんなさい…。」
そんな事どうでも良いのに。
一番悪いのは私なんだ。
自分勝手に行動したから皆の運命まで変わってる。
私が全部悪いんだ。
「魔の者にも色々いてね…。
人の皮を被っているのもいる…。
けどね。
リアの友達だったあの人は違うの。
あれは私のせい…。
あっちにいたはずなのに私がいないばっかりに
こっちへ来てしまった。
しかも、こっちにいた本人と出会っても消滅しなかった。
それどころか…取り込んでしまった…。」
もう良い…。
どうであっても私が悪い事に変わりはない。
もうルキはいない…。
虚世界にいたとしても私の知るルキは
ここにしかいなかった。
もう二度とあのルキは返ってこない。
「リア?」
また涙が勝手に流れている。
悲しくなんてないのに…。
「えっ!?」
今度は思わず声が出てしまった。
ノエルがリアをぎゅーっと抱きしめている。
「リア…私がいるから。
知り合ったばっかりだけどリアは私にとって
とっても大きな希望だよ。
だから、きっと…あの約束を…。」
そうだった。
約束。
忘れてなんかいない。
「ありがとう…。」
聞こえていたのか分からない。
だけど言いたかった。
第17話〜確かな未来〜