虚世界にいる必要はないし
自分と出会う事を考えると
すぐにでも戻れるなら戻りたかった。

「まだ駄目っぽいね。」

「いつになったら開くんだろう。」

再びボーダーに来たが開く気配すらない。
ぶちやぶった方が早そうな来がしてくる…。
ノエルがいるしそれは絶対しないのも仕方ない。


「だけどいつまでも虚世界にいるわけにもいかないよね?」

「うん…。」

あれからボーダーにはまったく魔の者も現れなくなった。
平和そのものに見えるこの虚世界。
本当の平和ってなんだろう。
何もかも平凡で毎日生きていられれば平和?
私の暮らしは平和だった。
あれはあれで良かったのか…。

ずっと森にいるのも仕方なく
森を反対側へ抜けてすぐにある村へと入った。
反対側にあるあの町とは違って人も少なく
活気もない。

更に二人の格好が目立つのもあって
すれ違う人も目をそらしていく。

「こういうところもあるよ。」

気にしてくれたのはノエルが一言くれた。

「うん。」

「実世界じゃここに村なんてなかったんだけどね…。」

それがどういう事なのかその時は
まったく気にすらしていなかった。

村でも一応泊まる場所はあってそこへ泊まる事にした。
町の宿とは違って古臭いつくりでリアには
逆に新鮮さを感じさせていた。

「はい、水。」

「ありがとうっ。」

ノエルが水を持って来てくれた。
…空気中にある水分を集めたんじゃ、
なんて思いながら飲んでみると
その美味しさに驚いた。

「これって…。」

「うん。
普通の水。
この村は自然の中で暮らしているみたい。
水もそこにある井戸から汲んだんだよ。」

へえ〜って顔をしながら過去を思い出していた。
昔にも似た光景を見ている。
相手は誰だっただろう…。
ニア兄さん?
ルキ?
違う…他の誰かが持ってきてくれた水。
それと同じ味。
同じ美味しさを感じた。


その日の晩。
ノエルが寝てしまった後も
リアはなんだか眠れなく宿を出て外で
ぼーっと空を見ていた。

同じ空なのにどうしてこんなにも違うのか。
曇った空も
小さな四角い窓から見た空も
この広く綺麗な小さな輝きまで見える空も
どれも同じく繋がっているなんて
なんて不公平なんだろう。

流れ星…。

お願いなんかする時間…
全然ないし…。

あの星たちも今はもうないのかもしれないんだっけ。

ずーっと遠くから光だけが一直線にやってきて
この星までやってきてる。
絶対に行けないような距離からここまで。

この世界だって本当はこれるはずのない世界。
お前たちと似たようなもんかな…。

その日、
近くに見えるのに届かない星たちに
見えなくなるまで語り続けた。


第05話〜虚世界との狭間3〜


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