それから2週間。
同じ村にいるのもあれだからって
色々な村、町を転々としたけど
そのたびにどきどきする。
自分がいないか。
ノエルがいないか。

ノエルはどうして慎重にならないのか
それはずっと不思議だったけど
なんだか聞けなかった。

理由があるとしたら
なんだか嫌な予感がしたから…。

「本当平和すぎるよね。
まだ1回も魔の者の気配すらないよ。
もしかしたら魔の者のいない世界なのかもね。
そういう世界だったら私も
使命とか運命とか…
そんなものに縛られてなったのかもね。」

そう…。
このノエルの性格は運命とか使命からのもの。
本来ならどんな性格になっていたんだろう。
この世界にいるノエルは…。
けど、そもそも魔の者がいなかったら
ノエルは存在しない?

「また聞いてないでしょ、リア!?」

「聞いてるよ。
ただ色々考えちゃって返事忘れてただけ〜。」

ヤレヤレってしながらノエルは
少し焦っているように見えた。

それもそのはず。
もうすぐ10年に一度の日になってしまう。
1週間前にはあの廃教会へ入って
準備などしないといけないらしい。

もう時間がない。
今すぐにでも本当なら帰りたいはず。

だけど、その方法が見当たらない。
あの2つの方法以外…。
だけどノエルが扉を壊す事はまずない…。


それから更に1週間。

未だに扉は開かない。

「もう限界。
これ壊そうよ。
そしたらあっちで何が起きてるか分かる。
それしかないよ。」

「…。」

本気で困っている。
ノエルもそれしかないって顔。

その時今までにないほどの気配がボーダーへと入り込んできた。
動きは遅い。
こっちへは向かってきているが
いつもの奴に比べると比にならない。

「あれはやばくない?」

「…ベルーガの気配。」

「ベルーガ?」

「あれは以前にあった事があるの。
正確に言うと以前倒したはず…
強さは比じゃないくらいにあれの方が上だけど。」

どういうこと…。
同じ魔の者がいるって事!?

「虚世界は無数にあるから同じのがいても…。」

そういう事か。
だけど強さが違うって事は思いが違うって事。
なんだか寂しいな…。

のんきな事を言っているうちにだいぶ近づいてきた。

「とりあえず逃げよう。
今までのと比べて全然あれはやばいよ。」

言っても逃げようとなんかしないノエルに
私はほっぺを叩いた。

「なっ!?」

「あんたね。
分かってるの!?
あんなのと戦ったら即死だよ。
もう扉壊して向こうに行くか
別の扉から虚世界に逃げるしかないよ。」

状況を理解したのかようやく本来の顔に戻ると
辺りの冷気を最大限まで集め始める。

「ノエル!?」

戦う気?
いや…。

その大きくなった玉を扉へとぶつけた。
扉はひびが入り
すぐにぼろぼろと崩れ去った。

が、その向こうには何もない。

「どういう事!?」

「…意図的に私たちを閉じ込めていた…。」

ノエルがにやりと笑い出す。

「ノエル?」

「リア…もうあっちには帰る事出来ないわ。
嵌められたのよ。
あの猫たちに。
禁忌を犯したものに罰を…。」

様子がおかしい。
しばらくボーダーにいたり
実世界へ戻れないという不安のせいもあって
精神的に参っているのかもしれない。

リアは向かってくる魔の者が来る前に
なんとしてもここから出たかった。

そして刀をノエルへと向けた。

「ノエル。
しっかりしなよ。
まだ方法あるじゃない。」

自分に向けられた刀を見てリアの言いたい事を
理解したらしいノエルは目を大きくしている。

「駄目だよ。
あれじゃどこにどっちが行くかも分からない。」

「二人とも消えるより良いよ…。」

有無を問わずにリアが全力でノエルに向かっていく。
覚悟を決めたノエルも必死にぶつかり合った。


第06話〜虚世界との狭間4〜


戻る