思い切りぶつかり合った二人は
互いに大きく吹き飛ばされたが
地面に叩き付けられたのはリアだけだった。
時間差もなく瞬時に飛ばされたらしく
ノエルの姿はどこにも見当たらなかった。
さようなら、ノエル。
ノエルは無事にボーダーを超えた。
実世界じゃない…?
それとも
森に飛ばされたらしいが黒猫たちの気配が一切ない。
「やっぱり何か起きているんだ。」
つぶやきながら森を慎重に抜けると
意外な光景が見えた。
そこには自分が居る。
出会ってはならない自分。
しまった!?
実世界じゃなかったとしたら…
「ぐっ…。」
ベルーガの圧倒的な攻撃の前に
何も出来ず傷つくリアは必死に自分を保ちながら
攻撃できる隙をうかがっていたが
そんな隙なんて一切見当たらなかった。
『どうした?
俺に乗っ取られたくないのなら
もっと自分の力を引き出せ。
さもなければお前はここで本当に尽きるぞ。』
心の中であいつが声を掛けてきた。
頭が痛い。
ふらふらする。
何も見えない。
もう倒れちゃえば楽…!?
ノエル…。
その時リアの内に秘めるそれが発動した。
「…。」
「…。」
「…。」
「あれ?」
確かに体が乗っ取られ意識が消えたと
思ったリアだったが意識がある。
『あんた。
俺が何者か分かってないようだが
俺はあんた自身だ。
入れ替わってられる時間なんかほんのちょっとだから
ほっといたけどあまりにも無理すっからよ…。
とは言っても…いずれは俺はあんたに飲まれる運命。
今はあんたにも意識があるはずだ。
よく見とけ。
本物の戦い方ってのをよ。』
そう言うと刀を一旦しまい
再び手を合わせ刀を出すが二本召喚した。
向かってくるベルーガに対して
向かっていくもう一人のリア。
その顔は自信に満ちている。
ゆっくりとしたステップから
一気に加速したかと思うと
ベルーガの背後へと回り込み
二刀流で一気に切りつけた。
それまでまったく歯が立たなかったベルーガがひるんだ。
その隙を逃す事もなく
今度は正面からの乱撃。
一歩下がったベルーガにもう一人のリアは
とっておきの一撃を食らわせると
ベルーガは灰となって消えていった。
『良いか。
どうあがいても運命はかわんねえよ。
だがな…守りたいもんがあるなら強くなれ。
お前は俺。
俺はお前。
邪魔な考えは消せ。』
どさっ
意識を保ったまま無理な動きをさせられたリアは
その場に倒れ込んでしまった。
しばらく動けもしないじゃないか…。
けど…あれが私自身…。
私の力…。
第07話〜虚世界との狭間5〜