全部の虚世界にノエルが存在しているわけでもない。
しかもいたとしてあの力を
持っている確率も分からない。
協力してくれるかも分からない。

それでも扉のない今
この方法でしかあっちへは戻れそうにない。

手がかりはあの町。
そしてあの廃教会。
森へ行けばじゃこうもいるかもしれないけど
今はボーダーを通れない以上
ノエルに頼るしかない。

「あんたに同じ格好した奴かい?
んー見た事ないな。」

「そうですか〜。」

自分がいなそうな感じである事を
町の人に聞いて確認してから町中へと入る。

『ついでにノエルがいるか聞いたらどうよ…。』

痛いとこを突かれたが
まったくそこまでは意識が回らなかった。
まずは自分と鉢合わせになる事だけは避けないと
っていう考えだけが先行していたから仕方ない。

その辺に居る数人に聞いてみたが
それらしい情報は入らない。

『いないって事っぽいな。』

「…。」

『どうした?』

「感じない?
さっきから私を見てる…誰か分からないけど
今も後ろにいる。」

『そうか?
俺には何も感じられないな…。
実体にならんとそういうのはあまりわからん。
だが、そう感じるのなら警戒はした方が良い。』

珍しい服装だから目を付けられているのかもしれない。
…それだけならまだマシか。

警戒したまま廃教会へと行ってみるが
誰もいないししばらく誰も入っていないらしく
歩くと足跡が綺麗に残る。

『ここにはいなそうだな…他へ行った方が良い。』

引き返そうとした時
さっきの見られている気配がすぐそこに現れた。

とっさに退き刀を出す。

「何者だ。」

扉の向こう側に確かに居る。
だが返事がない。

「出てこないなら扉ごと斬る。」

するとしばらくして一人の子供の姿が
扉の向こうから現れた。

その子は格好は違うが顔がノエルにそっくりだった。

まさか!?

「ノエル?」

「え!?」

それはまさになんで私の名前を?
っていう顔だった。

「ノエル…ちゃんなのね?」

こくりとうなづく少女。

世界が違うとその人の年や生活まで変わるのか…。

「お姉ちゃんは誰?
どうしてここに来たの?
おうちないの?」

『こりゃ駄目だな…さっさと他へ行った方が良い。』

「…私はここへ貴女を探して来たのよ。」

『おい、やめろ!!
むやみに話すもんじゃないぞ。』

私はリバースの忠告を無視して続けた。

「貴女には力があるはずよ。
空間を捻じ曲げる。」

「!?」

顔つきが変わったような気がしなくもない。
もしかしたら年が違うだけで
あの運命からは逃れられていないのかも。

「お願い。
力を貸して欲しいの。」

「お姉さんは何者?」


リアはこれまでの事を全て隠さずに話した。


「ふ〜ん。」

信じられないと言う顔ではない。
その顔には確かに確信がある。

「残念だけどまだそんな力ないよ…。
けど、お姉さんがその分を負担できるなら
道を開くだけなら出来るかもしれない。」

ちっちゃなノエルはなんとかしてあげたいっていう
あのノエルと同じ性格だった。
困っている人を一人でもって言うあの性格。
きっとノエルにとって…
これは運命じゃないんだ。
これが本能からのしたい事…。


第09話〜虚世界から〜


戻る