実世界にしては黒猫たちの気配がない。
本当に実世界じゃないのかもしれない。
森を抜けると町はあった。
しかしノエルが見当たらない。
廃教会へ行っても姿はない。
町の人に聞いても全然見た事がないと言う。
『ここが実世界だという確信がないな。
それにノエルが実世界へ飛ばされた確証もない…。』
それは、
二度と出会えないかもしれない。
そう言っているように聞こえた。
「そうだ!!」
リアはいい案が浮かんだ。
実世界ならあるはず…
もう一度廃教会へ行ったリアは
長椅子をじっくり見る。
『どうしたんだ?』
「やっぱりない…ここは虚世界…!?。」
ノエルと衝突した廃教会。
確かにあの時長椅子がいくつか傷ついたはず。
なのにここにあるのは朽ちているだけで
剣先の後もまったく見当たらなかった。
『けど飛ばされる場所って
強く思ったとこへ飛ばされるって言うぜ…。』
「だったらここにノエルが…。
だとしたら泉を使ってもう一度?」
『いや…戻ったとしてももういないかもしれない。
リアがボーダーにいないなら残っていても
実世界には帰れないからな…。』
そうだった。
ボーダーを通っては扉がないから戻れない。
だったら他に考えられる事は…。
『お前がした事と同じだろう?』
そうだった。
ノエルはここの私に会いに行ったんだ。
しかし行くまでの道ノエルを見た人は誰もいなかった。
「おかしいな〜。
普通に歩いてたら絶対通るから
誰かは見てるはず…。」
『引き返したほうが良いかもな。
来てなさそうだぜ。』
だとしたらどこへ…。
「リア?」
不意に背後から声を掛けられた。
「ノエル!?」
「どうしてここに…今さっき別れたばっかりなのに。」
まずい…虚世界のノエルらしい。
ここの私もいたらしい…。
『無視してこの場から回避した方が良いぞ。
自分と出会うなんて事になったら
それこそアウトだぜ。』
分かってる。
けどこれもチャンスのはず…。
「ノエル…。」
再び同じ話をすると納得してもらえた。
「つい数時間前に虚世界から私が来たわ。
同じ気配を感じたのは一瞬だったけど…。」
それって…消滅したって事…。
そんな…。
「安心して。
消滅はしてないと思うの。
勘だけど…。
今貴女だけを実世界へ戻すのは出来るけど
私自身にもダメージを受けてしまう…。
もうすぐ橋渡しの日だから
手傷を負ってしまったらしっかりと送れない…。」
反動!?
そうだったんだ。
私はなんて事をしてしまったんだ…。
最初の時もそうだったじゃないか。
だから手加減して技を使ったんだ。
あのちっちゃなノエルはそうなる事を知ってて
手加減したんだ…。
じゃああの笑顔の意味は…。
もうそれ以上何も考えられなかった。
その後、その世界のノエルとは別れ
泉へ行ってみる事にした。
あとは勝手に進入するしか手はない。
きっとノエルもそうする。
黒猫たちが一匹もいない泉。
これじゃ誰でも入り放題…。
だから魔の者が流れ込んでるのかも。
第11話〜レベルアップ?〜