何か懐かしい。
何も変わりない森がそこにはあった。

ただじゃこうたちの気配はない。
他のところでもそうだった。
どこにも黒猫の気配はなかった。
世界全部で異常なことが起きているの?
そんな事が…。

とりあえず扉は戻った。
次、ノエルがボーダーに来たら気が付くはず…。

リアは町へ急いだ。
町の中は相変わらずだった。
別に変わった様子もない。
たぶん、まだ満月の日じゃないんだろう。

廃教会へ入ってもなんら変わりはない。

結局私には何も出来ない。
ここにいても魔になる者をとどめる事も
しっかりあの世へ送る事も…。

きぃぃぃぃ

「リア…。」

後ろから懐かしい声がした。
とても懐かしい。
私は何も言わずに抱きついた。

「リア!?」

「心配したんだから…ぐすん。」

よしよしとしてくれるノエル。

「扉に気が付いたの?」

「うん。
あれって…。」

「虚世界のノエルが直したんだよ。
そんな事までできるんだね。」

「いろんな手があるみたいね…。
私にはさっぱりわからないわ…。
とにかく時間ないから準備に入るわ。」

手際よく準備に入ったノエルを横目にしながら
長椅子に座って何もできないリアは
なんだか眠くなってきた。

「寝ちゃってて良いよ〜。
時間来たら起こすから。」

「…うん。」



目が覚めたのはノエルの声じゃなかった。
ざわざわとしている廃教会内。
無数の魂が見える。
目をしっかり擦ると
見えていた魂が実体した。
目を細めると体の外側に魂が見える。

「起きちゃった?
まだ時間はあるけど…。」

「うん…これって皆?」

「そうだよ…あっちへ行けなかった魂。
もうすぐ皆そろうよ。」

いっぱいいる。
これが皆魔になるかもしれない魂?
本当なのかな…。
信じられない。

ふと魂たちの中に見覚えのある顔があった。

「ククル!?」

「…。」

気が付かないようだ。

「ノエル、ちょっと。
あれククルだよ。
なんでいるの!?」

「…。」

「嘘でしょ?
だってあの時…。」

ぱにくるリアを静止させるように
ぎゅ〜っと抱きしめる。

「リア、聞いて。
あの子は昔からいたの。
ずっと前からこの日が来るまで…。」

そんな馬鹿な…。

「事実は曲げられないんだよ、リア。
起こってしまった事は変わりようがない。
だから…間違えないように送らないといけない…。」

「けど…前は普通に話してたのに…。」

「もう意識もないんだよ。」

それでも確かめたい。

そう思うといてもたってもいられず
ククルに近づいて呼びかける。

「ククル?
ねえ、分かる?」

いくら声を掛けても
体を揺すっても反応がない。

「リア…。」

仕事をしながらもリアを気にするノエル。
だけどどうしようもない…。

「どうせ誰も僕の事なんて見てないのさ。
神様だって僕を見放したんだから…。」

あの言葉を思い出していた。
忘れるはずもないあのククルの言葉。

準備を終えたのかノエルがリアの側へ来る。

「リア…そろそろ。」

「…本当にどうしようもないの?」

「リア。
この子たちの幸せはここにとどまる事じゃない。
あの世へ行って成仏する事。
だからとどまらせちゃいけない。」

「うん…。」

そして橋渡しが始まる。


第14話〜廃教会から天へ〜


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