弓を構えると光に包まれた矢が現れ
リアへ向けて放たれる。
「アーリン!?」
「行くであります…。」
弓を持ったまま弦を引くだけで
次々と矢が現れては放たれる。
「止めてアーリン。
戦う理由なんかないよ。」
言っても聞かない。
無言で次々と矢が放たれる。
後退するリアを追い込んで行くアーリンに
ノエルが冷気の壁を作って加勢する。
「リア、一旦引こう。
このままじゃ…。」
ぴきっ
がしゃーんという音と共に壁が一気に崩れ去る。
「拳で!?」
「ノエル…アーリンは空手もできるんだ…。」
ここまでだなんて知らなかった。
簡単にあの分厚い氷の壁を壊しちゃうなんて。
「1対2でありますか。」
リアははっとした。
「違う。
アーリン、相手は私だけ…。」
言い終える前にリアとノエルに向かって無数の光が放たれた。
「ノエル逃げて。」
リアは自分が避けるので精一杯でノエルに放たれた矢まで
どうにかする事はできなかった。
「ノエルっ!?」
何本かは避けたらしいけど全部を避ける事は出来ずに
体には無数の傷が付いてる。
「ノエル、しっかりして。」
「痛っ。」
意識はあるが息が荒い。
「…。
お嬢様、屋敷へ戻るであります。」
近づきながら次の矢を手にする。
「アーリン…私は帰れない。
もう帰るわけには行かない。」
「本当に残念であります。
こんな日が来るとは思ってもいなかったであります。」
最後の矢がノエルを抱きしめる私の背中に向けられ放たれた。
お願い、力を貸して…大切なものを守る強さを…。
本当に大切なものをやっと手に入れたんだ。
ノエルを守りたい。
その時眩しい光がリアとノエルを包み込んでいった。
「なんでありますか。」
光はアーリンの矢も取り込み広がっていく。
「なんだろう…温かい。」
目をつむっていたリアが目を開くと
光の球の中に二人が居る。
「リア…。」
ノエルを見ると傷が徐々にふさがっていく。
これはなんなんだろう…。
リアは自分でしたのかも分からない。
外には戸惑うアーリンの姿が見えるが声は聞こえない。
「これは…ボーダーの近い空間!?」
傷がほぼ完治したノエルが言う。
「外からは完全に隔離された別空間を作ってる…。」
「ノエル…。」
何を言うよりも先に無事で良かった。
いつも以上に抱きしめるとノエルが少し痛そうにするけど
そんな事気にもしないでぎゅ〜っとした。
「だけどどうして急にこんな能力が?」
「わかんない。
だけど、ただノエルを助けたいって願っただけ。」
そうだ。
私のせいで誰かを傷付けるなんて絶対駄目だ。
ノエルは私が守る。
リアは刀を力強く握りなおすとその空間から外へ出た。
第06話〜屋敷の前庭3〜