リアは意を決して木を降り一気にアーリンへと近づく。
いくら鈍いアーリンでもその音には気が付き
リアの降りた方向へと矢を放った。

しかし当たった感じが無く
アーリンは再び辺りをきょろきょろしているが
一向にリアの姿が見当たらない。

「どこでありますか…。」

じりじりと動きながらリアを探すが
どこにもその姿はない。

「いないであります…。」



その頃…

「リア!?」

「ただいま。
早く屋敷の中に行こう。」

「けど、アーリンさんは?」

「それは…うまく撒いた。」

けど簡単に引っかかるんだから…。
ただ枝を何本か落としただけで騙されるって。
気が付かれる前に急がないと。

「…。」

ニコニコのノエルがずっとリアを見ている。

「なに!?」

「ううん、なんでもなーい。」

「えぇ…気になって寝れなくなる…。」

「ただ、そういう選択もあるんだなって思っただけ。」

リアの頭の中には?がいっぱいだった。

「リアの両親も凄く強いの?」

「ん?
父上と母上は別に…。
あまり話した事もないんだ。
屋敷にいてもあまり会わなかったし。」

「そうなんだ…。」

リアを見ると別に悲しい顔なんてしてない。
ノエルはそれが普通なのかなって思いながら
自分の過去を思い出していた。



それはまだ8歳の頃。

ほとんど世間の事なんて知らなくて生きる意味なんか考えてなかった。
欲のままにご飯を食べて寝て遊んでた。
欲しいものは側にあったし
不都合な事なんて何もなかった。
それが変わったのはあの日。

家におしかけてきたのはたんなる泥棒。
代々迷いし魂を天へと送っていたうちの家系は
特殊な能力があるとは言え戦う力なんてなかった。

あそこで抵抗なんかしなければ…。
プライドなんか持たなければ…。

何もできない私の目の前で一人の男によって両親は殺された。
辺りは真っ赤に染まり月夜に照らされるその男の
シルエットが未だに…。

それになぜ私が助かったのかもまったく記憶にない。
あの男は確かに私を見ていたのに…。

それから私は重たい十字架と使命を一人で背負うことになった。
だから一人でも生きられるように強くなった。

これが全て運命じゃないとしたら…。



「ノエルどうかしたの?」

「ん…なんでもないよ。」

いつになくどっか遠くを見ているノエルに
リアは気が付きながらも自分から話してくれるまで待つ事にした。


第08話〜強くなりたい〜


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