見慣れた廊下。
見慣れた壁。
見慣れた天井。
どこも変わりなくそのままだ。
夜の屋敷は静まり返っていて忍び込むには不気味すぎる。
ここにいた頃はそんな事全然思いもしなかったのに。
そうだ。
屋敷に入ったから既にバルバドスにはばれてるはず。
急ごう。
しかし遅かった。
誰かがその影から姿を現す。
「なぜまた来た。」
ニア兄さんだ。
「兄さん話があるんだ。」
「ここがどこか分かっていないのか?
さっさと帰るんだ。」
「そうはいかない。
どうして私を助けるのかそれだけでも聞かないと帰る事は出来ない。」
ニアの動きが止まる。
「助けた理由?
そんなものは簡単だ。
それが運命だからだ。
お前の死ぬ日はまだ先だ。」
何を言っているんだ。
死ぬ日?
ばかばかしい。
また運命なんて言葉を…。
「分かったら帰れ。
バルバドスが来るぞ。」
「リア…。」
納得できないまま入った場所から外へ出て急いで道を引き返すと
門が開いている。
しかも誰もいない。
「はあはあ。」
だいぶ戻ったところで一息つくが
ノエルは手を離そうとしない。
「ノエル?」
「離しちゃ駄目。
離したらまた引き返しちゃいそうだから。」
「ノエル…。」
結局、たいして意味も分からないまま。
死ぬ日が決まっていると…。
「気にしないほうが良いよ。
たとえ運命があるとしても死ぬなんて事簡単に言ったら駄目。
生きたくても生きれなかった人もいっぱいいるんだから。」
「そうだね。
ノエルは強いな…。」
「そうじゃないよ。
ただそういう絵をいっぱい見てきただけだから。」
悲しそうな顔。
その顔をされるととても非力な自分を感じる。
もっと強く。
もっとノエルが安心できるように強くなりたい。
第09話〜気配〜