闇だけの空間がしばらく続いて
それを抜けると広い場所へ出た。
「ここがあの世…。」
「…。」
言葉では表現できないほどの世界が広がっていた。
それは現世と何も変わりのない空間。
しいて言うなら美しすぎる場所だった。
二人は絶句したまま向かい合い笑顔になった。
それまであった不安は一気にどこかへ飛んでいき
期待と希望だけが二人の心を埋め尽くす。
しかし、ここがどこなのかが不明だった。
見渡す限り永遠と続くとも思える花畑は
地平線のかなたまで続いている。
「天国だよね…?」
ふと疑問がノエルの口から出た。
これだけ綺麗なとこだしそうだよね…っていう感じで言う。
そもそも天国と地獄があるのかも不明だったんだから
どっちなのかも分からない。
「たぶん?」
あいまいに答えるとノエルはがくがくと震えだす。
どうしたの?と聞こうとしたがノエルの見ている方向に
目を向けた途端リアの目がそれに釘付けになった。
それは花畑の上空に浮いていて
遠くにもかかわらずその大きさに驚くほどだった。
「あれって…廃教会!?」
廃教会とは言ったもののそこに見えているそれは
実世界や虚世界で見たそれと違い
とても綺麗で建てられたばかりにも見えるほど。
「そうだったんだ…これが現実…。」
「どうしたの!?」
「あははははははは。」
ノエルが不適に笑い出した。
「ノエル!?」
「だっておかしいじゃない。
私があんな事しなくても魔になるわけじゃなかったんだよ。
あの場所は死者にとってここへ繋がる道。
逆に私がその道を塞いでたんだよ。
10年間も待たせて…。」
ノエルが必死に食い止めていたのはここへ繋がる道!?
そんなことする意味がなかったってこと!?
けど…。
「じゃあどうしてノエルのいない世界では魔に?
おかしいじゃない?」
「それはきっと強制的に魔にする人でもいるのかも…。」
あいまいだ。
だけど…。
「きっと何か理由があったんだよ。」
優しく包み込むように抱きしめながら言うと
ノエルは泣いていた。
無言のまま。
ただ今までの思いを全て流すかのように
リアの胸の中でひたすら泣き続けた。
その間ずっと私は小刻みに震える小さなノエルの体を支えていた。
それから数分…10分くらいあったかもしれない。
「リア、いつもありがとう。」
泣き止んでノエルはそういうが吹っ切ったようには見えない。
「大丈夫なの?
このままでも全然良いよ。」
「リア…リアの体いつも温かいよね。
とっても気持ち良い…。
お母さんの匂い…。」
「ノエル…。」
リアにはどこか複雑な感情が沸いてきたが
それでもノエルがかわいくて仕方なかった。
「あそこ行ってみよう…他に手がかりもないし…。」
「うん…。」
第03話〜ニア〜