「刀を取れ、ニア。」

そう言うとリアは刀を強く握り締める。

「リア、何を!?」

ノエルが止めようとするがそれを跳ね除ける。

「ノエルは下がってて。」

「だけど…。」

「お願い。
これは私とあいつの運命…。」

そこまで言うとニアに向かって行く。
回りにじゃこうの姿はない。
全力なら負けないと思った。

何度もリバースと入れ替わってきたリア。
動きも力の扱い方も少しずつ体で覚えてきた。
その成長は誰よりも早くニアも驚いていた。

そして決着は一瞬だった。
なんの抵抗もなくニアはリアに斬られてしまった。

「!?
なぜ…。」

「そんな顔をするなよ。
もう良いんだ、これも運命。」

「どういうことなの?
なんでここへ。」

「…本当のお前を見つけたかった。」

「!?
本当の私?」

「あれはお前が5歳の時。
俺にいつもくっついて歩いてたお前は
あの森で泉に落ちた。
俺は必死に探した。
そしてあの空間にたどり着いた。
気を失っていたお前を抱えて出た先は虚世界。
まだ小さかった俺はそんな事思いもしないで
普通に屋敷までお前を…。」

「まさか…。」

ノエルが何かに気が付いたのか泣き出した。

「ノエル?」

まだ理解出来ていないリアはノエルを抱きしめ
ニアを見る。

「…そこでお前はそこの世界のお前に出会ってしまった。」

「…。」

「すまん…。」

それは衝撃的だった。
リア自身それがどういう事なのか理解するのには
それから随分時間が必要だった。

ただ、今理解できたのは自分が育ってきたほとんどの時間が
虚世界だったという現実。
自分がなぜ運命に逆らおうとしていたのか
異常なまでにこだわっていたのは
本能で実世界と虚世界を知り本来いるはずの世界ではなかった事を
自然と知っていたからなのかもしれない。

「兄さん帰ろう。」

深手を負ったニアの時間を封鎖すると
傷口があっという間に治っていく。

「俺を許すのか?
勝手に虚世界へ連れ去って何もなかったかのように
今まで生きていたというのに。」

「それを今理解する事は出来ない。
だけど兄さんが死ぬ必要はどこにもない。
さあ、帰ろう。」


第05話〜運命の鎖〜


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