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涼しい風が吹く。
私の頬をつたい通り過ぎていく。
例え嫌な夜があったとしても
こうして朝がやってくる。
朝があって夜が来る。
夜があるから朝もある。
私はこの子たちのために…。
ぷに~。
リアがあまりにも良い気持ちで眠っているから
頬を引っ張ってみるノエルは笑顔の似合い鬼かもしれない。
「またほっぺたぷに~したっ。」
こうすると目覚めの良いリアだが今日はいつも以上に調子が良いのか
無駄にうるさい…。
二人とも起こしたところで変化に気が付いた。
海が白い!?
「あれは塩だよ。」
「塩!?」
「ここら一帯は潮が引くとずーーーっと先まで
歩けるんだよ。」
さくさくと歩いていける塩の上。
舐めてみると塩の味がする。
見渡す限りの塩。
「あ、あっちに魚がいる。」
取り残されたのだろうか。
…。
「こんないっぱいあったら何日も魚食べられるね。」
「そんないっぱい持っていけないよ。」
どこから出したのか知らない袋いっぱいに魚を
詰め込んでいるが…。
ごごごごっ
と言う音と同時に地震が起きる。
「なんだっ。」
ノエルがいち早くそれに気が付くと
二人を急いで浜の方へ向かわせる。
「どうしたの?」
「あの魚、どうしてああなったのか分かった。
ここはすごい速さで干潮と満潮を繰り返すんだ。
早くしないと飲み込まれる。」
だが満ちてゆくそれには逆らえない。
一瞬で飲み込まれてゆく。
泳げるはずのノエルもそれの速さのせいで
まったく動きがとれずに飲み込まれていった。
「うっ…。」
気が付くとそこはどこかの浜辺…二人は!?
二人の姿がない。
どこに…。
目は覚めたが起き上がる事は無理だった。
くそっ。
私は何をしているんだ。
慎重になりすぎてこんな事に…。
とにかく立ち上がらないと…。
力を入れても全然起き上がれない。
意識だけがはっきりしている。
自分の弱さに泣けてきそうだった。
声が聞こえてきたのはその時だった。
「誰かいるんか…?」
「…あぅ…ぅぅ…。」
声にならない声で助けを呼ぶとそれが寄ってくる。
「ぎゃあああああああ。」
すると相手が突然叫び声を上げている。
その姿は…赤い紐?リボンのようなもので
体をぐるぐると巻いているだけの姿。
体は…リムのように小さい気がする。
「人間…。」
つんつんされているが…反応すら出来ない。
つんつん
つんつん
つんつん
いつまで続くんだろうか…。
「人間…。」
つんつんでなぜ人だと分かるのか不思議だけど
とりあえず安心してくれたのかな…。
と、思ったら走り去っていくではないか。
もう姿もない…。
このまま力尽きてしまうんだろうか…。
リア…。
リアは無事かな…。
ごごごごごごごごっ
何の音!?
「はあはあ。
大丈夫かな。」
水!?
さっきの子…。
走り去ったんじゃなくて水を汲んできてくれたの!?
手で作った器ではほんの一握りの水しか汲めない。
それなのに…。
それから何度汲んできてくれただろう。
ようやく動けるようになる頃には
ばてばてになっているその子。
「ありがとう…。」
「良いんよ~。
元気になってくれれば。」
なんて良い人…。
人!?
「それにしてもここに生身の人間が来るなんて
何年ぶり~。」
「!?
ここはどこなの?」
確か海に飲み込まれて…。
「ここは地獄。」
その子がにやっと笑いながら言った。
第05話~旅~