それから門にたどり着くまでに不思議と
鬼は姿を現さなかった。

しかしそこには鬼が2匹。
それ以外には誰もいないようだった。

「リアはいない。
まだどこかさ迷ってるのかな。」

「とにかくノエルだけでも先に門をくぐった方が。」

ネムの言いたい事は分かる。
待っていても来るか分からない。
もう出た可能性だってあるし
鬼にやられたかもしれない。

それでも私は信じてるから。
リアだってここを目指して歩いてるはず。
リムだって…。

リムは平気だとしても
リアだけは絶対に連れて帰らなきゃ…。
私のせいで旅に出たんだし。

「それに鬼がいたんじゃ出るに出れない。」

そういうとノエルは戦闘体勢に入る。

「ノエル!?
無茶だよ。
1匹でも倒せないのに2匹も相手したら…。」

「大丈夫だよ。
私には勇気がないだけ。
リアなんかより強いんだから…。」

リアみたいに何も考えずに
ただ倒すことだけ考えよう。
ここなら涼しいから使える。

小さく手の中に冷気を込めると
確かに冷気が球になる。

よし。
いける。

幸いまだ鬼は気が付いていない。
それを確認すると冷気をありったけ溜め込み始めた。

さすがにそれだけ溜めると鬼も気が付き
2匹とも向かってくる。

が、それはノエルにとって好都合だった。
大きく集まった球を
2匹目掛けて飛ばすと目の前で砕き
細かくなった冷気の針を一斉に突き刺した。

それは確かに突き刺さっていたがこたえていない。
鬼はそのままノエルの前まで来ると侵入者として判断したのか
無言で襲い掛かってくる。

似た攻撃にしても2匹同時に攻撃されると
避けるのは難しい。

あっという間に追い詰められるが鬼の動きが止まった。
門が開いていく…。

死者が入ってきたのだ。
鬼は1匹がその対応に行き
1匹はそのままノエルの相手をする。

少し楽になった。
上手く避けながら冷気で鬼を攻撃するが
これといってこたえている感じもない。

どうなっているんだ。
バンよりもずっとレベルが上なのか。
動きも全然変わらないのに。

もう1匹が処理を終えて戻ってくる。
2匹相手ではまったく抑えきれずに
ノエルは傷付いていく。

まずい…。
もう冷気も作れなくなってきた。

その手に込める力すらままならないノエルは
避ける事も出来ずに直撃を受けると地に伏せてしまった。

「そのくらいにしてくれないかな。」

ほんの一瞬で鬼ののど元に刀を突きたてた。

「リア!?」

「遅れてごめん。
リムが歩くの遅くて。」

少し離れた場所に走っているリムの姿も見えた。
少しほっとした…。

「寝てて良いよ。
すぐ終わるから。」

リアがふわ〜っと飛び上がると消えた。

!?

辺りがまぶしい光に包まれると鬼は真っ二つに切り裂かれていた。

私なんかよりずっと強い…。
私だって成長したはずなのに…。
ずっとずっと素質もあるんだ。

「大丈夫?」

倒れている私の目の前でじーっと覗き込んでくる。

「うん…。」

「あの子は?」

少し離れたところでリアに怯えているネムがいる。

「ネム。
平気だよ。
私の探してた友達。」

私が言うとニパ〜っと笑顔になって近寄ってくる。

「きゃ〜〜。」

始まった…。
もう毎度だから事前に殴っておく。

「うぅ…。
まだ何もしてないのに。」

にらむとそれ以上何も言わなくなった。

「リムはここに残った方が良いよ。
現世行っても…。」

「それは私が話したよ。
それでぴーちゃん預かってる。」

リアがかばんの中を開けるとぴよぴよと
元気にしているぴーちゃんがいた。

「寂しいけどお別れ…。」

「ネム。
お願いね。」

「任せといて。」

大きくえっへんとかっこつけるネムを見て
安心するノエルが門を見る。

「問題はこれ。
さっき1回開いたけど入れるのかな。」

リアが門の前に立って時間を封鎖してみるが
一向に開く気配が無い。

「やっぱりここは時間が無いんだ。
いろんな場所で試したけど全然効果なし…。」

とりあえず開くのを待つしかなかった。


第09話〜だから私に出来る事〜


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