「天、おはよっ。」
どすんと肩を叩いてきたのはクラスメートの蛍成雫(とうなり しずく)。
いつも朝から元気…いや、元気じゃない場面を見た記憶がない。
物心付いた頃から一緒にいる親友。
ようするに幼馴染っていう奴。
いつもだけど短いスカートに見てくれと言わんばかりの胸。
無駄にでかい…なんていつも思うのは皆の意見だろう…。
その胸に反して短い髪なのは陸上部だからかもしれない。
胸がでかいくせに走るのが速いなんて反則…。
「おはよ…。」
私はというと雨宮天(あまみや あめ)。
普通の女子高生…朝は非常に弱い。
学校へ行くのにも一苦労。
「あっ、これ上げるっ。」
ふと見ると雫が何かぶら下げているのが分かる。
コンビニの袋だ。
ほれほれ〜ってその中身を取り出して私に見せびらかすのは
円錐の上の部分を切り取った形のひんやりとしているパック…アイス!?
私は無意識にそれに手が伸びるがアイスが逃げる。
「こらこら〜無言で得られるほどこの世は甘く無いぞ。」
ニヤニヤした感じの雫が私の顔を覗き込んでいる。
むす〜っと一瞬…私はしていたかもしれないがアイスの命には返られない。
「雫様〜どうかそのアイスをワタクシにお与え下さいませんか。」
「よし、よかろう。」
ようやく手渡されたアイスはひんやりしていてこの真夏には
神様級の肌触りをしていてそれだけでも十分なのだが
もっと驚いたのはそのアイスの味。
なんと新発売のブルーベリーミント味じゃないか。
私はふたを取ってさあ、食べようとしたが…。
「ふっふっふ。」
雫が再びニヤニヤしているのはスプーンを持っているから。
何も言わずに手だけ出すと雫はその手をひょいっと引っ込める。
「…オネガイシマス。」
「あはは。」
わざと片言で話すと何がおかしいのか噴出して笑っている。
が、私はそんな事無視してアイスを1つ、2つと口の中へ放り込んだ。
「!?」
必死に笑いを堪えている雫…。
それも無理はない。
「これのどこがブルーベリーミント味だよ〜。」
「あれ〜。」
泣きそうな顔をして雫に差し出すとわざとらしく言う。
「まあまあ、早く行かないと遅刻するしさ?
さっさと食べちゃいなよ。」
「言われなくてもそうしますっ。」
半分騙された事にイライラしながら、
半分いつもこんなに明るくいてくれる雫の優しさに感謝しながら、
私はいつも雫と学校へ向かう。
「それにしてもイチゴ味なのに食べないと気が付かないなんて
さすが天だね…。」
第01話〜1日目〜