野盗!?
いつも通り泉へ向かう途中悲鳴が聞こえた方へ向かうと
数人の男が女の子1人を取り囲んでいる。
「待ちなさい。」
「なんだてめえは。
邪魔するつもりか?」
面倒だけど仕方ない。
ノエルは構えると向かってくる野盗を一瞬にして片付けた。
「大丈夫?」
「平気…。」
警戒してるのかしら…。
「大丈夫よ。
お姉さんはたまたま通りかかっただけの…
あっちにある街から毎日森の奥の泉まで散歩してるんだけど
そしたら悲鳴が聞こえたから…。」
やっぱり苦手…。
もう〜どうしたら良いんだろう。
女の子は少しだけ安心したのかノエルを見ているが
まだ警戒が解けたわけでもないらしい。
ノエルも何を話して良いのか迷う…。
それにしても…この服装は。
カールしている金色の綺麗な髪。
どこかのお嬢様なのか白い服に薄い赤い刺繍などが入ったドレス。
「私の名前はノエルよ。
貴女の名前は?」
「アリス…。」
話すのが苦手なだけかもしれない。
「アリスちゃんね。
こんなところでどうしたの?
お父さんとかお母さんは?」
困った顔をして何か言いたそうだけど言葉に出来ないのか
モジモジしている。
私はそっと近づき頭をなでてあげる。
「家出してきたの。」
家出!?
リアと似た状況かしら…。
「そっか〜。
じゃあ行きたいところあるの?」
「ううん…。」
全然行く場所も決めないで出てきたみたい…。
どうしたら良いんだろう。
このままにしておいたらまた野盗に襲われちゃうかもしれないし…
うちに連れて行くのが良いのかな…。
「行くところ…ないの…。」
!?
「じゃ、じゃあ…と、とりあえず…うちに来る?」
なんだかぎこちない恋人みたい…。
「じゃあ、家、こっちだから。」
「あ…。」
「どうしたの?」
また何か言いたそうにしてる。
こういう性格の子なのかな。
リアとは真逆ね…。
「散歩。」
そういう事。
本当…リアとは真逆だわ…。
「そっか。
じゃあ散歩してから帰ろうか。」
「うん…。」
アリスはスッと手を出してきた。
私はそれをしっかりと…
何かに答えるかのように握り締め泉へ向かった。
「あのやろう…。」
いつもの泉が少し違う。
そんな風に思えるのは1人じゃないからかもしれない。
隣にアリスがいる。
不思議そうに泉を見ているアリスにボーっとしてしまう。
「どうしたの、ノエル?」
私がどんな顔をしていたのか分からないけど
アリスは心配そうに私の顔を覗き込んでいる。
「あ…何でもないよ。
帰ろうか。」
「うんっ。」
嬉しそうに手を握ってくるアリスが
とても、とても可愛く見えた。
家まで帰るとアリスがまた不思議そうな顔をしている。
「どうしたの?
遠慮しないで良いよ。」
「うん…。」
どうしたんだろう…。
「普通の家ってこんな感じなの。」
そういう事…。
どっかのお嬢様だからなのか一般の家なんて小さすぎるのかも。
あ、そうだ。
「アリス。
その格好だと目立つから…これ着れるかな。」
私は小さくなった服をアリスに渡した。
それはぴったりだったけどなんだか…
シンデレラみたいな格好になってしまう。
小さな子供でもなんとなくある品みたいなものは
仕方ないのかもしれない。
「ちょっと買い物してくるね。」
「…うん。」
ちょっと心配そうな顔してたけど…
うちなら安全のはずだし。
ノエルは夕飯に少しでも美味しい物をと思って
買い物をしに外へ出た。
薄暗くなってきた空は不気味な顔をしている。
なんとなく小走りになるノエルは
買い物にもあまり時間をかけずに家へと戻った。
誰かいる!?
戸へ手をかけた時、声が聞こえた。
「お嬢さん、いい加減一緒に来てもらいますよ。
貴女には1億もの報酬がかかっているんだ。
俺たちを助けると思って捕まってくれ。」
「やーだー。」
「傷付けると報酬が貰えないんだから大人しく
捕まってくれよ、まったく。」
さっきの野盗!?
後を付けられてたんだわ…。
けど、少し変わった野盗?
まあ、悪い奴には変わりないけど。
「やだ、やーだー。」
「少しくらい痛めつけないと分かんないわしいな。」
あら…急展開。
ノエルはすぐに戸を開け中に入っていく。
「ちょっとあんたたち私の家で何してくれちゃってるわけ。」
「げ、戻ってきやがった。
あいつ何してたんだよ…。」
!?
アリスが2人の男に抑えられ正面の男に
殴られそうになっていた。
「この〜。」
私は頭に来て冷気を集めると大きな板を作り出した。
「アリスっ、しゃがんで。」
アリスが言われたとおりにすると
私は氷で出来た板を野盗たちへと一気にぶつけてやった。
「ぐへっ。」
「つええ…しかも能力者…。」
ノエルは明らかにイライラしていた。
「あんたたち。
誰かの犠牲の上にある幸せなんか
ちっとも幸せなんかじゃない。」
「…ちっ、いくぞ。」
野盗たちはもう来ないだろう。
「大丈夫だった?」
「うん。」
そう言いながらも小刻みに震えているアリスを
私はそっと抱きしめた。
第02話〜やっぱリアそっくりだわ〜