そう。
私は世間の話題に大変疎い事。
今知った。

アリス・トーイ・パンテットと言えば
リアの家と同じくらい権力を持っている家柄の…
一人娘。

どうして家を出たんだろう。

チラッと見たアリスはぐっすりと眠っている。
その寝顔からはどんなに嫌な思いがあって
家を飛び出したかなんて分からないくらい
とても可愛い寝顔をしている。

リアもこの頃はこんなだったのかな。

などと思っているとアリスが目を覚ました。

「おはよう、アリス。」

「…おはよ。」

眠たそうにしてるところもリアに似てる。
ふらふらしてるアリスをベッドから落ちないように
支えるとアリスがそのまま私にもたれかけてくる。

ぬくぬくしてるアリスはまるで天使みたいな顔をしている。
あそこで出会ったような天使たちじゃなくて
廃教会にいるあの像みたいな顔…。

ぷにぷに

ぷにぷに

「ん〜…。」

ぷにぷに

ぷにぷに

「ん…はっ。
ノエル…。」

ぷにぷに

ぷにぷに

「起きてるってば…
もう…。」

それから朝ごはんにして昼まではのんびり…。
のつもりだったけどアリスがそわそわしている。

「どうしたの?」

「ん…。」

「具合でも悪いの?」

私がアリスのおでこを触って確認するけど
熱はないみたい。

「そうじゃないの…。」

どうかしたんだろうか。
やっぱり狭いしベッドだってふかふかじゃない。
部屋だって1個しかないし狭い。
昨日みたいに野盗が来るかもしれない。
家に帰りたいのかな。

「あのね。」

「ん?」

「あの…ね?」

「言い難いなら言いたい時でも良いんだよ。
慌てなくてもいたい時まではここにいても良いから。」

ぶんぶんって首を振っているアリス。
本当、どうしたんだろう。

「そうじゃない…ちゃんと言わなくちゃ…。」

ぼそぼそと何か言っている…。

「あの…ね。
ノエル…昨日の事なんだけど…。」

「昨日の事?
そっか…1人にしちゃ駄目だよね。
ごめんね、アリス。」

「違う。
あ…違うの。
昨日は助けてくれてありがとう。
その…2回も…。
それに家にまで泊めてくれたし…。
変な人に家だってばれちゃったみたいだし…。
ここにいたら迷惑かなって。」

年下なのにしっかりしてるのかも。
私よりずっと。
リアと似てる感じがするのはこういうところなのかも。

「全然、迷惑なんて思ってないよ。」

「そう…。」

まだ何か言いたそうにしている…。
まだ何か不安があるんだ…。

「ノエルって…。」

「ん?」

「ノエルって信じても良いんだよね?」

!?
そっか。
アリスからしたら外にいる人は皆
賞金稼ぎに見えるのかもしれない。
私はなんて答えたら良いんだろう。

「ノエルは悪い人じゃない。
そう思うけどノエルの口から聞きたい。」

私ははっとした。
自分も同じような時があったのに
全然忘れてたなんて…。

「私はアリスをどこへもやらないよ。
私がアリスを守るから。」

言ってみると結構はずかしい…。
けど…アリスは嬉しそうな顔をしている。
それになんだか初めて誰かを守らないとって思ってるかも…。
リアの時もそうだったけどリアは私なんかよりも強いわけだし。
けど…ずっとこのままっていうのも…
良いのかな。


それから1週間くらい経って随分アリスもこの生活に慣れたらしく
1人で起きたりご飯の用意を手伝ってくれたりしてくれる。
今も頑張って掃除なんてしてる。
まだまだ私も子供なはずなのに親になった気分すらしてしまう。

のん気にボーっとしていると眠たくなってしまう。
が、それを覚ましてくれる事件が起きた。

ぱりん

何かが割れる音!?

閉じかけていたまぶたをしっかりと開くと
アリスがあちゃーって顔をしている。
見ると皿を1枚割ってしまったらしい。

「ごめんなさい。」

私は近寄って怪我をしていないか確認すると
頭をなでてあげる。

「ノエル…貧乏なのにごめんね。」

グサッと刺さる言葉を堪えながら
なでる頭に少しだけ力を入れてしまったノエル。

この感じ…やっぱリアそっくりだわ。


第03話〜ノエルみたいになりたい〜


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