狼の中から姿を現したベニシュは
次々と天使たちを葬っていく。

やめて…。

もうやめて…。

ベニシュ…。

ノエルは何も考えずにベニシュへ向かっていくと
後ろから抑えるように抱きしめた。

「ベニちゃん。
お帰り…。」

一瞬だけ動きが止まったかに思えたが
すぐにそのまま他の天使たちを攻撃する。
それはノエルの知っているベニシュではなく
魔化した力。
何倍にも膨れ上がった力を抑えきれないかのように
放出される力になす術もなく次々と天使たちが飲み込まれていく。

また皆が不幸になる…。
目の前で皆が死んでいく…。

なんで…。
なんでなの…。

「ベニちゃん戻ってきて。」

暴れるベニシュを抱きしめ続けるしかないノエルに対して
ベニシュは溢れる力を放出し続ける。

それは天使がほとんど動きを止めるまで続いた。
そして、ベニシュも力尽きる。

結局何もできなかった。
また誰も助けられなかった。
なんでこうなるのよ…。

それでも…。
まだ生きてる人がいる。

ノエルは瓦礫の山と化した地に降り
生きている天使たちを必死に救出しようとした。

「無駄な事はやめな。」

!?
この声を忘れる事はない。
アルシェリルだ。

ほとんど壊滅状態の天使たち。
動ける者たちはいても抵抗できる力はもうない。
遠くにいる天使たちが来るのを待つしかない。

「ノエル。
よくここまで生き延びた。
私の最高傑作だよ。」

!?

「さすがに無から作ったら言う事を聞かないわ。
魔になり損ねた者よ。
私は失敗作を早く壊したい。」

私が作られた者!?
魔の者だって言うの!?

違う。
私の記憶にそんな物はない…。
アクア。

『そんな事はどっちでも良いじゃないか。
あんたはあんただろ。
そんな事よりこいつをなんとかしないとやばいぜ。』

分からない。
私が…。
人間じゃない?

「さあ、あの世へいきなさい。」

アルシェリルが稲妻を呼び出し
ノエルへ向かって放つ。

避ける事も出来ずに直撃すると
ノエルは吹き飛ばされるがそれほどダメージはない。

アルシェリルは次々と稲妻をノエルへぶつけていくが
そのほとんどを直撃するものの
ノエルは呆然としているだけで
意識を失うことはない。

「どうなっている。
なぜ消滅しない。」

慌てるアルシェリルをよそにノエルは無心。


私に何ができる?
また皆守れない。

冷気と稲妻が入り混じりノエルを取り囲んでいく。
それはまるで金色に輝くオーラのように
ノエルを守るように包み込んでいる。
焦るアルシェリルが稲妻を打てば打つほどその力は蓄えられる。

「ノエル!?」

外へ出てきたアリスがノエルの姿に驚いた。

「どうしたの!?」

アリスの側に稲妻が落ちる。

「きゃ。」

アルシェリルはアリスに気が付くと一目散に
アリスの方へと向かっていくが
ノエルは瞬時に集めた冷気でアルシェリルを貫いた。

「ぐっ…。」

それでも必死にアリスの方へ向かうと
そのままアリスの手を掴み、
次元の穴を開くとその穴の中へと消えて行った。



静まり返った辺りにノエルも我を取り戻した。

どうしたんだ…。
なんでこんな事に…。

『覚醒したんだ。
我を忘れてって辺りからするとまだ自力じゃ駄目だろうけど…。』

覚醒!?

『誰にでもある壁を越えた状態の事。
別に不思議な事でもない。』

よく分からないけど…アリスが連れ去られたのは覚えてる。
出てくるなって言ったのに…。
それに多くの天使が犠牲になった。

アリスは平気だろうか…。
人質としてなら…次会うまでは無事だろうけど…。
そもそもこっちからアルシェリルのいる場所へなんていけないし…。



自然と左手が上がっていき振り下ろされると次元の空間が現れる。

!?
どうなってるの。

『もうお前は人じゃない。
あいつの作り出した部分が蘇ったんだから
後は無意識にでも覚醒していく。』

どうだとしても今は行くしかない。
これ以上他の誰かを巻き込みたくない。

待ってて…私の大切な人。


第04話〜ノエルは私が守る〜


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