これでなんとか戸は開けられないで済みそう…。
だけど当たらない敵をどうやって…。

しかも逃げ場が無い。
外への戸はノエルシャドーの向こう側だし
さっきも試したけど開かない。

後ろは私の部屋ともう1つ!?
あったっけ。

振り向いた私には見覚えの無い戸が私の部屋の向かいにあった。

駄目元でその戸を押し開けようとすると
意外にも抵抗なく
その戸は開いてくれた。

それどころか向こう側から開いたような気がした。

そこにはノエルにそっくりな子供がいた。
顔がそっくりだけど男の子に見える。
髪が短くて目がぱっちりしている。

「ノエル何してるんだよ。
大丈夫?」

誰だろう…記憶にない。

「大丈夫だけど…。」

不安そうに見つめてくる少年。

「ボーっとしてるけど眠いの?
頭でもぶつけた?」

「うーん…ぶつけたみたい。」

嘘を付いた。
この子が誰なのかどうしても知りたい。

「なんか記憶がないの…。
ここはどこ…。」

「おいおい…重症だ…。
ここはお前のうちだろ〜。」

私はどきどきしながら聞きたかった質問をした。

「貴方は誰?」

「僕?
やだな〜姉ちゃん…。
本当に忘れてるの?」

姉ちゃん!?
私が!?
じゃあ…私の弟?
そんな…知らない…。
忘れてたって言うの?
そんなはずない…。
私には兄弟姉妹はいなかった…。

だけど…ここにいるのは…。

「僕の名前はバットだよ?
それも覚えてないの?
ずっと昔から一緒にいたのに…。」

しょんぼりするバットにノエルは
どうして良いのか分からない。

「きっとすぐ思い出せるから…。」

薄暗い部屋の中で足音が近づいてくる。
ノエルシャドーの足音…。

もうすぐそこにいる!?
どうしたら良い…。

弟までいるのに…。
さっきみたいな冷気はもう出せそうにない…。

そして、ノエルシャドーの手が戸を開けてきた。

「なんだ?
勝手に戸が開いてる…。」

バットには見えていないの?
どういう事…。

「なんか嫌な感じする…。
ノエル…。」

そう言うとバットはノエルにしがみついて離れない。

どうしよう…。
逃げ道もない…。
攻撃も出来ない…。

ここを回避する方法…。
何かあるはず…。

私に出来る事。
私にしか出来ない事…。

「バット、ここにいて。」

私はノエルシャドーを誘うように
部屋を出ると廊下の途中にあるあの鏡を
壁から外すと外への戸の所まできた。

そして、迫ってくるノエルシャドーに向かって鏡を傾けた。
すると鏡に反射した月の明かりが
その影を消していく。

もがくように消えていく影は
最後まで抵抗しようとしているようだが
光には勝てるはずもなく
綺麗に消え去り
ノエルの元に戻っていく。



「ノエル?」

バットが部屋から出て駆け寄ってくる。

そうだ…。
私には弟がいたんだ。
なんで忘れていたんだろう…。

「もう大丈夫だからゆっくり寝よう。」

「うん…おやすみ…。」

少し不安そうにしていたがバットは
自分の部屋へと戻っていった。

私は…両親をひと目でもと思って
寝室の戸を開けようとした。

「ノエル。」

!?

メルだ。
さっきまでいなかったのにどうして…。

「開けてはいけない。」

メルは首を横に振りながらそう答える。

「けど…もう退治したんだし。」

「駄目よ。
もうこれで寝なさい。」

私はなぜか抵抗出来ずに
勝手に動き出す体のなすがまま
ベッドへ入って深い眠りへと付いた。



目が覚めたのはいつものベッド。

あれは夢?
それとも…。

けど、それを知るすべはない…。

そう思っていた。
あの鏡を見るまでは。


第04話〜結末〜


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