ただ、助けたい。
純粋にそう思うだけだった。
理由?
そんなもの知らない。
あるとすれば―――――――――――。
「!?」
煙が少しずつ晴れていくと中から
誰かが立っているのが見え始めた。
「ノエル…。」
やがて煙が晴れるとそこには見覚えのある姿のノエル。
大きな鎌がとても特徴的。
「死神化したか。
とは言え…こちらも計算済み。」
大鎌を持ったノエルがふわっと飛び上がると
宙で逆さになるとそのままアルシェリル目掛けて
突っ込む。
雷でガードしようとするが大鎌の方向が少し変わっただけで
アルシェリルをかすめていった。
「ちっ。」
アルシェリルを覆っていたぼろぼろの布切れは
全て吹き飛んでしまった。
「!?」
ノエルはその姿に驚いた。
「何を驚いている。」
ノエルが驚くのも無理はない。
自分そっくりな姿をしている。
「私のコピーなのだから似ていて当たり前。」
追い込まれているのいうのに冷静に話しだすアルシェリルに
少し不気味に思いながらももう一度大鎌を振るう。
今度は受け止めずに距離を取って避ける。
「鎌。
刀や魔法と違ってその攻撃パターンは限られる。
どれだけ破壊力があろうとも当たらなければ木偶の坊。」
それでもアルシェリルの雷によるダメージはほぼない。
さっきから直撃していても痛みがさっきよりも少なくなってる。
再び大鎌を持ってアルシェリルへと近づくと
今度はアルシェリルの方も近づいてきた。
「!?」
しまった。
鎌の間合い。
大きな鎌じゃ懐に入られるとどうしようもない。
そしてアルシェリルは両手に込めた雷をありったけ
ノエルの腹にぶち込んだ。
ノエルはその衝撃で教会の外まで飛ばされてしまった。
アルシェリルはありったけの雷を放ったせいもあって
かなり消耗している。
それでも立ち上がるノエル。
かなりのダメージを受けてはいるが
それでもアルシェリルに向かっていく。
「もう良いだろう。
何度しても同じ攻撃じゃ――!?」
その鎌に持ち主はいない。
教会の外からノエルがアルシェリル目掛けて放り投げたのだ。
「ノエルはどこに!?」
「こっちよ。」
そこはアルシェリルの後ろ。
廃教会の空いた屋根から入ってきたノエル。
その手には大量の冷気。
ノエルが始めてアルシェリルの読みを超えた。
完全に防御へは回れないアルシェリルは
大鎌を避けるがノエルの冷気に直撃する。
今度はノエルの冷気で辺りが水蒸気の中に隠れて行く。
「ノエル。」
!?
まだ見えないままの中にアルシェリルの声が聞こえる。
「そろそろ時間。
よくやったから御褒美よ。
彼らの器は生き物である必要はない。
それじゃあまたね〜。
楽しかったわ。」
「アルシェリル!?」
水蒸気が晴れていくとそこには既にアルシェリルの姿はない。
いったい何しに来たの。
…そんな事よりもまずナイトメア。
近寄ると苦しそうにしている。
しかし、どうして苦しむ…。
やっぱり他の死人とは違うの!?
他の死人は腐る前に新しい皮に取り替える。
それなのにナイトメアはそうしない。
今だってこうして苦しんでいる。
どうしたら良いんだろうか。
考えた時、あの言葉が脳裏を過ぎった。
生き物である必要はないと。
ノエルは持っていたひよこのぬいぐるみを取り出した。
そしてナイトメアに近づけてみた。
「何も起きるわけないか。」
ちょっと期待しただけ馬鹿だった。
アルシェリルが他人を助けるわけない。
そもそもナイトメアを殺しに来たんだし。
その時だった。
ナイトメアが光だし目を向けてはいられない。
「ん…。」
そこにはひよこの形をした生き物がいる。
「まさか…。」
「ノエル?
これどうなってるの。」
自分の体に違和感があるのかぷにぷに突付きながら
慌てている。
「いや…私に聞かれても。」
けど、アルシェリルは嘘をついてなかった。
成功したんだ。
「ひよこ…。
もしかしてずっとこの体!?」
はっとしたかのようにナイトメアひよこの顔が青ざめる。
ぬいぐるみなのに…。
「まあまあ良いじゃない。
これで死人の助かる方法は分かったし
クーシーがいれば死人も判断できるし。」
と、辺りを見るがクーシーがいない。
さっきのでどこかに吹き飛ばされたのだろうか。
「クーシーどこー?」
ナイトメアも声を上げるが返事がない。
それからいそうな場所を2人で探し回ったが
クーシーの姿は見つからなかった。
「きっとまた会えるから。」
「うん。」
しょんぼりしているナイトメアを
ノエルはぎゅーっと抱きしめた。
そして、朝が来た。
第06話〜休日〜